人類発祥の地であるアフリカ。資源も豊富で、世界中にある全鉱物資源の約30%がアフリカに存在しており、ダイヤモンドなど高値で取引される貴金属がたくさんとれます。人口は12億人で、労働人口が非常に多い。GDPもアフリカ大陸全体ではドイツ(世界4位)と大体同じ規模です。
こう聞くとアフリカは豊かな国なんだ、と思いそうですが実状は全く異なりますよね。ご存知の通り、アフリカは世界で最も貧しい大陸であり、テレビやインターネットなんかではよく、アフリカの子どもたちが貧困に苦しんでいる姿が報じられています。もしかしたら皆さんの中にも募金活動や要らなくなった古着をアフリカの子どもに寄付したことがある人もいるかもしれません。
資源が豊富に存在しているのにもかかわらず、なぜアフリカは貧しいままなのでしょうか?
実は、世界一豊かな大陸だったアフリカ
歴史を見てみると、実はかつてアフリカは世界で一番豊かな大陸だったといっても過言ではありません。13世紀から17世紀にかけてアフリカの西側ではマリ王国という王国が繁栄したのですが、この繁栄のカギとなったのが交易です。
アフリカは地中海を挟んでヨーロッパから近いので、アフリカ北部からは多くの商人がラクダに乗ってサハラ砂漠を越え、アフリカ各地に交易路を築きました。特にマリ王国が存在していたニジェール川沿岸は金が山のように埋蔵されていたので、莫大な利益を得ることができ、マリ王国は「黄金の国」と言われ、非常に豊かになっていきました。
事実、歴史上の人物で一番のお金持ちはこのマリ王国の国王、マンサ・ムーサだと言われており、なんと大量の金を持って従者とともにメッカへ聖地巡礼にいったという実績があります!
彼の資産はだいたい40兆円だったと言われており、これは2023年現在で世界一の富豪であるベルナール・アルノーの資産を軽く超える額です。(フォーブス)
アフリカ西部からサウジアラビアまではアルジェリアやカイロを経由する必要があるのですが、マンサ・ムーサが莫大な黄金をカイロにばらまいたことで、カイロにおける金の価値が下落してしまったほど。(津野田)このように、金が多いことからも、アフリカは豊かになることができる風土が元々あったワケなんです。
現代の貧困の元凶は◯◯にある
アフリカにはマリ王国のような王国の他に数々の部族が存在しており、何千もの部族がアフリカ大陸で生活していました。
しかし、19世紀になるとヨーロッパ諸国が富を求めるためにアフリカ大陸を力ずくで支配し、従属させます。(植民地支配)簡単にいうと、アフリカにはたくさんの天然・人的資源があるので、産業革命真っ只中のヨーロッパ諸国はそれを欲しがっていました。
ヨーロッパ諸国がアフリカを植民地支配して手始めにやったこと。それは国境線の確定です。どこからどこまでが自国の植民地の範囲なのか、それを決めるためにヨーロッパ諸国は無理やり国境線を引いたんですね。
世界地図を広げてみるとアフリカの国境って妙に直線の部分が多いって感じませんか?あれは植民地時代の名残で、ヨーロッパ諸国が緯線や経線に合わせて国境を引いたからです。


右)現在のアフリカの国境
当然、元から存在していたアフリカの原住民の部族たちは緯線や経線に則って領地を確定していたわけではありませんので、ヨーロッパ人が国境線を引いたことによって、部族は分断されてしまったワケです。さらにルワンダ内戦の原因となったように、少数派の民族を極端に優遇して多数派の民族を支配させる仕組みをヨーロッパ諸国はとったので、元々仲が悪くなかったのに民族対立が起きてしまった事例がアフリカでは多く存在します。
民族ごとに国が作られたわけではなく、アフリカの殆どの国々は多くの異なる民族で無理やり構成されているため、必然的に争いごとが多くなってしまうんです。
こんな感じで、国が一丸となって団結していない状態で豊かになっていこうとするのは難しいですよね?例えるならば、クラスがバラバラな状態なのに運動会の大縄で学年一位を取ろう!と言っているようなものです。
先進国による◯◯
みなさんはチョコレート好きですか?僕は甘党なので大好きなのですが、チョコレートってスーパーに行って見てみてもそんなに高くないですよね?高級チョコレートを除けば、150円から200円くらい出せば一つくらいは買えます。チョコレートの原料はカカオですが、これは西アフリカなど限られた場所でしかとれない珍しいものです。にもかかわらず、なぜこんなに安く買えるのでしょう?
結論をいうと、それは児童奴隷を使っているからです。

(Wikimedia Commons:
Electrolito氏撮影)
アフリカでは貧困に苦しんでいる家庭がお金のために自分の子どもを奴隷商人に売り、買い取った子どもをカカオ農園で奴隷として働かせていることが現在でも行われています。カカオ農園側も年収が4000円から多くて14000円と非常に少ないため、無賃で働いてくれる奴隷を使うしかない状況にあるんです。週に80~100時間、奴隷として
児童奴隷にされた子どもは、週に80~100時間カカオ農園で働かされているともいわれています。(一週間のうち59.5%は労働に費やしていることになる)
僕もチョコレート好きでよく食べるし、チョコレートは世界中で大人気なのでカカオの需要は高いはずです。しかしカカオの市場価格はロンドン市場やニューヨーク市場が決定しているので、市場が価格を安く設定してしまえば農家が売れるカカオの額は安くなってしまいます。さらに、カカオ農園と市場のあいだには中間業者のバイヤーが存在しているため、バイヤーが極端に安くカカオを買いたたけばカカオ農家に行き渡る売上は微々たる物となってしまいます。
これはカカオだけではなくコーヒー豆とかもそうなのですがアフリカはある意味、先進国から経済的に搾取されているワケです。言い換えれば、僕たちはアフリカを搾取して豊かさを手に入れているんです。
資源の呪い
「先進国による搾取」に関連して、アフリカが資源が豊富なのにもかかわらずいまだに貧しいのは資源の呪い(resource curse)が存在しているからだといわれています。資源の呪いとは、天然資源が多い低所得国が非資源国と比べて経済成長率が低い傾向にある現象のことを意味します。
このような現象が起きてしまう理由は様々ですが、主に:
- 資源の売却に依存しすぎて他の産業が発展しない(いわゆる、モノカルチャー経済)
- 資源を巡って争いが起きる(利権や汚職など)
があります。
アフリカにはレアメタルやダイヤモンドといった貴重な鉱物がありますが、私欲にまみれた一部の政治家が資源を独占したり、あるいは利権を外国に売ってしまうことがしばしば起こります。色んな例がありますが、ここではガーナの事例を取り上げます。
ガーナ政府は中国開発銀行と融資制度に関する契約を結んで、30億ドルの融資枠の契約を結び、そのお金でインフラ整備をしました。ただ、問題点が一つ。それは融資のかわりに、石油売却で得られる収入を担保にしていることです。
他にも、ガーナのアワソ(Awaso)鉱山では中国企業がボーキサイトの採掘権を獲得していて、利益はすべて中国企業に持って行かれているという現状があります。現地人ではなく、中国からやってきた人々を雇用しているので、現地にはまったく利益がない状態になっているんです。(債務の罠、これについては『スリランカでいま何が起きているのか』で詳しく解説しています)👇
こうした事態はアフリカのあちこちで発生しています。こんな感じじゃ、アフリカが豊かになっていくことはとても難しいですよね?
◯◯は貧困のループを辿る!
「迷惑なボランティア」
現地の産業を破壊してしまう力を持つ恐ろしい行為。
よく着られなくなったり、要らなくなった古着をアフリカの恵まれない子どもたちに寄付しよう!というキャンペーンを耳にしませんか?先進国から大量に寄付された衣服や製品が安価で売られているせいで、現地で服を作る人たちが儲からなくなり、現地の産業を破壊してしまっているんです。
貧困のサイクルから抜け出せない理由の一つとしてあるのが、貧困に苦しんでいる人たちがいつまでも寄付してくれる人に依存してしまうということ。これについては『そのボランティア、迷惑です!』で詳しく言及しているのでよかったらこちらもどうぞ!👇
まとめ
アフリカが貧しい理由を一通り解説していきましたが、これ以外にも様々な要因があります。アフリカ全体的に気候が非常に暑く、砂漠で人が住めない部分が多いのもあるし、エボラ出血熱みたいに病気が蔓延している点も挙げられます。
ヨーロッパ諸国に翻弄されながらも、過酷な環境下で毎日生活している人々が多いということを頭の隅に置いておくことが大事なのではないかなと感じています。
参考文献
・木村靖二・岸本美緒・小松久男、『詳説世界史研究』、山川出版社(2017)
・津野田興一、『塩で大儲け!「サハラ縦断交易」の繁栄から零落まで 黄金狙ったヨーロッパの横やり』、日刊ゲンダイ、2022年1月19日
・Brian Warner, The Richest People Of All Time – Inflation Adjusted, CelebrityNetWorth, 2014年4月14日
・Kate McMahon, AFRICA: The Dark Side of Chocolate, CORPWATCH, 2005年10月28日
・Dani Valent, ‘Why’s chocolate so cheap?’: the Aussie artisans calling for greater transparency, Sydney Morning Herald, 2022年4月15日
・出町一恵、『低開発資源国のマクロ経済運営の課題』、財務総合政策研究所ASEANワークショップ、2017年12月14日
・House Hearing, 113 Congress, IS THERE AN AFRICAN RESOURCE CURSE?, The U.S. Government Publishing Office, 2014