海外旅行に行くと、日本車がたくさん走っていて驚くことってありますよね。
たとえば東南アジアやインドでは、日本車のシェアが非常に高く、街を見渡せばトヨタやホンダの車がずらっと並んでいます。
日本にいるとあまり意識しませんが、実はどんな車が走っているかって、その国の経済や歴史が色濃く表れるポイントなんです。
そんな中で、僕がウズベキスタンを訪れてまず驚いたのが、、、
逆に、日本車がほとんど走っていないということ。
世界中で当たり前のように見かけるはずの日本車が、ここではほとんど見当たらない。その光景は、これまで訪れてきたどの国とも少し違っていて、強い違和感を覚えました。
トヨタもホンダも日産もあれだけ世界中で見かけるのに、ウズベキスタンの街中ではほぼ見かけない。お隣のタジキスタンでは日本車はたくさん走っているのに。代わりに目に入ってくるのは、同じ見た目の車ばかり。
空港を出るとずらっと並ぶ白いセダン。タクシーを呼んでもどれが自分の車か分からないレベルで同じ車種。
その正体はシボレー!(Chevrolet)
シボレーはアメリカの自動車メーカー・ゼネラルモーターズ (GM)のブランドで、日本でもごくごくたまにシボレー・カマロというかっこいいスポーツカーが走っているのを見かけます。
あまりにも多すぎて、現地では冗談まじりに「ここはシボレースタン(Chevroletstan)」なんて呼ばれているほど。
なぜ、ここまで特定のメーカーばかりなのか?そしてなぜ、日本車はほとんど見かけないのか?
そこには、ソ連崩壊後の国家戦略や、関税政策、さらには中国メーカーの台頭まで絡んだ、意外と奥深い背景があります。
今回は、実際に現地で感じた体験も交えながら、ウズベキスタンのちょっと不思議な車事情について、わかりやすく解説していきます!
なぜウズベキスタンはシボレーだらけなのか?

タシュケントの街を歩いていると、同じ車ばかりが走っていることにすぐ気づきます。白いセダン、似たような形、似たようなロゴ。
実際、ウズベキスタンで販売されている車のうち、約8割以上がシボレーとも言われています。中でもシボレー・コバルトというセダンは特に多く、タクシーの大半がこの車種です。
では、なぜここまで偏っているのでしょうか?
その理由はシンプルで、国が自動車産業を守ってきたからです。
■ ソ連崩壊後に始まった「国産車戦略」
1991年にソ連が崩壊すると、ウズベキスタンは独立して新しい国家としてスタートしました。
当時の大統領イスラム・カリモフは、自国で産業を育てることを重要視し、その中でも特に力を入れたのが自動車産業です。
1992年、ウズベキスタン政府は手始めに韓国の自動車メーカーである大宇(Daewoo Motors)と提携し、合弁会社UzDaewooAutoを設立します。この工場はフェルガナ盆地のアサカに建設され、1996年から本格的な生産が開始されました。
しかし1997年のアジア通貨危機の影響で、大宇は経営破綻。
この流れを受けて2000年代初頭、アメリカのGMがウズベキスタン市場に参入します。
2008年にはGM Uzbekistanが設立され、それまでの大宇ブランドの車はシボレーブランドとして再編されていきました。
日本車より中国・韓国車が多い理由とは?
ウズベキスタンに行って驚くのは、向こうでは日本車をほとんど見かけないということ。
その一方で、韓国の現代・起亜や、中国メーカーのBYDは街中でよく目にします。ウズベキスタンでシボレーの次に見かける車でいえば、BYD、現代・起亜で間違いないでしょう。

なぜ韓国車や中国車のほうが日本車より多いのでしょうか?
その背景にはソ連崩壊後に進められた国家主導の産業政策、そして現在も続く税制や経済戦略が大きく関わっています。
まず、日本車は基本的に輸入に頼る必要があります。
しかし、ウズベキスタンでは輸入車に対して関税だけでなく、物品税や付加価値税など複数の税負担が課されるため、販売価格が大きく上昇します。
その結果、市場では国内生産車や優遇を受けやすい車種に比べて不利になりやすい構造となっています。
一方で、シボレーは長年にわたり国内で生産されてきた、いわば国家ぐるみで育成された国内生産ブランドとして広く普及しました。
「とりあえず車を買うならシボレー」という空気ができあがっているのは、こうした歴史の積み重ねがあるからです。
一方で韓国メーカーは、現地組立(CKD)などの手法を活用しながら市場に入り込み、徐々に存在感を高めています。
ここで面白いのは、単に制度面だけでなく、現地の人たちの感覚としても“韓国車はコスパがいい”と受け止められていることです。
価格はシボレーよりやや上でも、日本車ほど高くはない。しかも見た目が洗練されていて、内装も今っぽい。
そのため、「少し良い車に乗りたい」、「古く見えない車がほしい」と考える中間層にとって、現代・起亜はちょうどいい選択肢になっています。
そして近年、特に存在感を高めているのが中国メーカーの電気自動車(EV)、特にBYD。
2025年上半期のウズベキスタンのEV市場では、BYDが87.4%という圧倒的なシェアを占めています。その理由は意外とシンプルで、走行距離あたりの充電コストがガソリン車よりも安く、日常的に使ううえでの負担が小さいからという意見が多いのです。

これも政府によるEV優遇政策や現地生産の開始といった制度面の後押しが大きいのですが、それだけではありません。
実際には、安いわりにデザインが良く、新しくて未来的に見えるというイメージも、人気を後押ししているように見えます。
実際に僕が現地タシュケントのショッピングモールで若い夫婦に話を聞いてみたところ、「BYDはデザインが洗練されているし、今のところ維持費も安く済んでいる」と話していました。市場に出回っている台数も増えていることからも、BYDを選ぶ人は確実に多くなっているようです。
さらに特に首都タシュケントのような都市部では、車は単なる移動手段ではなく、ある意味や見栄や生活の質を表す存在でもあります。
そうした中で、BYDのような中国EVはシンプルでモダンなデザインや静かな乗り心地によって、若い世代や新しいもの好きの人たちに受け入れられやすいのでしょう。

「日本車は信頼性が高い」というイメージがあったとしても、価格面で遠い存在になってしまえば、日常的な選択肢からは外れていきます。
逆に、BYDや現代・起亜は現実的に買えて、しかも見た目も悪くないという点で、生活者の感覚にうまくフィットしているのです。

新車価格で約270万円なので、結構安い
つまり、ウズベキスタンの道路に並ぶ車は、ただメーカーが違うというだけの話ではないのです。
そこには、国家が時間をかけて育ててきた産業のかたちがあり、どの国とどのようにつながってきたのかという経済の流れがあり、さらには環境政策や、人々の「こういう車に乗りたい」という感覚までもが、そのまま映し出されているんだなあとひしひしと感じます。
ただ街を歩き、行き交う車の波を眺めているだけなのに、「ああ、この国は今、確実に新しい時代へと動いているんだな」と、胸が熱くなる瞬間が、色々な国をめぐる中で何度もありました。
もし今後、ウズベキスタンへ行く機会があれば、騙されたと思って街中を走っている車にもちょっとだけ注目してみてください。
有名な観光名所ももちろん素晴らしいけれど、何気ない道路の景色の中にこそ、ガイドブックでは絶対に味わえない「この国ならではの本当の面白さ」が待っているはずです!