2023.2/11
ヴァルラアム修道院をひととおり見終わると、ちょうどお昼どき。
昨晩、カランバカのバーでテイクアウトしておいたピザが残っていたので、車の中でランチタイムにすることにしました。
修道院の荘厳な雰囲気を余韻に感じながら、気取らずにほおばるこのピザ。外はカリッと香ばしく、中はもちもちで、歩き疲れた体にじんわりと染みわたる美味しさです。
車の窓から外を眺めてみると、すぐ近くにメテオラとカランバカの街並みを一望できそうな絶景スポットを発見。ピザを食べ終わったら、迷わずそこへ向かいます。
岩の上の絶景スポット
岩の上を慎重に進んでいくと、目の前に現れたのは――息をのむほど壮大な大パノラマ!澄んだ空気の中、修道院や町並みがまるで絵のように広がっていました。

奇岩とだけあって、やっぱり迫力があります。まるで巨人が積み上げた石柱みたいに、空へ向かってそびえる岩々。その上にちょこんと乗る修道院が、より絶景さを醸し出しています。さらに遠くを見れば、雪をかぶった山々が静かにそびえ立ち、全体の景色に奥行きと壮大さをプラス。
足元から見上げても、見下ろしても、ここはまさにメテオラという名前がぴったりな、空に浮かぶような世界でした。

アギア・トリアダ修道院
絶景をたっぷり堪能したあとは、引き続きメテオラの修道院巡りへ。
次に向かったのは、先ほどの絶景スポットからすぐ近くにあるアギア・トリアダ修道院。映画のロケ地としても知られるこの修道院、岩の上にぽつんと建つ姿がなんとも印象的。遠くからでもその存在感は抜群で、近づくにつれてワクワクが高まります。
ここはメテオラの中でもひときわドラマチックな立地で知られる修道院。創建は15世紀前半とされ、長い間修道士たちの祈りの場として守られてきました。
かつては岩壁に吊るしたロープやはしごでしかアクセスできなかったそうで、その隔絶感はまさに天空の要塞。現在は長い階段と遊歩道が整備され、一般の観光客でも訪れやすくなっています。


修道院に続く階段を登っていると、なんとゴンドラのような籠がロープを伝って修道院のほうへゆっくりと動いているのを見つけました!どうやら物資を運ぶためのもので、どうやら昔の修道院たちの生活を垣間見ているような雰囲気になりますね。
修道院内部には、美しいフレスコ画や聖具が今も大切に残されていて、外の絶景とはまた違う、ひんやりとした静謐な空気が漂っていました。
そしてここ、実は1981年公開の映画『007/For Your Eyes Only』のロケ地としても有名なんです!修道院の岩壁や周辺の景色を見ていると、まるで映画のワンシーンに迷い込んだような気分になります。
名称:アギア・トリアダ修道院(Μονή Αγίας Τριάδας)
住所:テッサリア地方トリカラ県カランバカ(Kalampaka 422 00)
Google評価:4.8/5 (5064レビュー)
営業時間:9:00-16:30(毎週木曜日は休館)
アギオス・ステファノス修道院
最後に向かったのはアギオス・ステファノス修道院。
断崖の上に建ちながらも、ほかの修道院とは違い長い階段を登る必要がなく、小さな橋を渡るだけで到着できるため、足に疲れが出てきた午後の訪問にはぴったりでした。
修道院の門をくぐると外の絶景とは一変して、ひんやりと落ち着いた空気に包まれます。中庭は花々で彩られ、煉瓦色の屋根と青い空とのコントラストがまるで絵画のよう!まるでファンタジーゲームに出てきそうな世界が、そこには広がっていました。
遠くにはカランバカの街並みとテッサリア平原が広がり、視界の果てまで続くその眺望に思わず息をのみます。

内部には保存状態の良いフレスコ画や聖具が展示されており、特に祭壇の金色の装飾は光を受けて神々しい輝きを放っていました。この修道院は歴史的にも重要で、長い年月の中で戦争や地震の被害を受けながらも、修道士たちの祈りと努力によって今日まで守り継がれてきたそうです。
観光客はほとんどおらず、館内も中庭もとても静か。ベンチに腰を下ろしてみると、眼下に広がる大地と澄んだ空気が心をゆっくりとほどいてくれます。断崖に建つ荘厳な姿だけでなく、行き交う旅人の心を静かに整えてくれるような修道院でした。
名称:アギオス・ステファノス修道院(Ιερά Μονή Αγίου Στεφάνου)
住所:テッサリア地方トリカラ県カランバカ(Kalampaka 422 00)
Google評価:4.7/5 (4499レビュー)
営業時間:9時30分~13時00分、15時00分~17時00分(毎週月曜日は休館)
ギリシャの秘境村:ヴラハヴァ
これで一通りメテオラの修道院群を見終えたので、せっかくならと周辺もドライブしてみることに。
北側へ車を走らせると、道はどんどん山の方へ。標高が上がるにつれて、先日の大寒波の名残なのか、雪がまだ所々に残っていて、ギリシャの自然を肌で感じます。
アギア・トリアダ修道院からおよそ15分。たどり着いたのは、山奥にひっそりと佇む小さな村、ヴラハヴァ(Βλαχάβα・Vlachava)。

人の気配はまったくなく、静寂の中で一匹の犬だけがこちらへ向かって歩いてきます。
煉瓦色の屋根の家々は、冬のやわらかな光を受けて、まるで物語の挿絵のような趣を漂わせているよう。メテオラという観光地の喧騒から離れたこの村では、時間が音もなく、静かに流れていくようでした。
どうやら冬はほとんど人がいないそうですが、夏になると人口は倍にふくらみ、村は静かながらも避暑地としての賑わいをひっそりと取り戻すのだそうです。標高が910メートルなので涼しそうなのは間違いないですね!
ヤギの大群との出逢い
ヴラハヴァを後にして、再び車を走らせます。午後の陽射しはやわらかく差し込み、遠くの山々に積もった雪を金色に照らしていました。
のんびりと周辺をドライブしていると、なんと突然!!丘の上から白や茶色の毛並みが揺れながら、ヤギの大群が一斉に飛び出してきました。

中央奥にあるのがさっき僕たちがいたメテオラの奇岩
道いっぱいに広がるヤギたちは、まるで自分たちがこの道の主だと言わんばかりの堂々とした足取り。鈴の音がカランコロンと響き、時折こちらをじっと見つめるつぶらな瞳に思わず笑みがこぼれます。カーナビを確認すると、道路の横に牧場があるようでした。
車を停めてしばらく眺めていると、牧羊犬らしき犬が最後尾をきっちりと見張りながら、群れをゆっくりと導いていきます。その光景はまるで絵本の1ページのようで、観光名所ではない日常のギリシャを垣間見た瞬間でした。
そんな心温まる出会いを胸に、ハンドルを再び握ります。次なる目的地はエピルス地方の玄関口・イオアニア。今日はその街に泊まる予定です。
山道を静かに抜けながら、カランバカの街に別れを告げます。茜色に染まりゆく西の空。その先、雪化粧をまとった山脈の向こうには今宵の宿が待つイオアニアの街がきっと静かに灯りをともしていることでしょう。その温もりに辿り着くまで、夕暮れの気配を胸いっぱいに抱きながら、ただまっすぐにハンドルを握り続けました。
「欧州放浪記⑮ ~メテオラの秘境村:ヴラハヴァ ~」に2件のコメントがあります