【富士山麓】美しい自然の中になぜ工場がたくさんあるのか?

静岡県を東西に横断する国道1号線東名高速を走っていると、ふと窓の外に広がる光景に目を奪われます。なだらかな茶畑の丘、その向こうには雄大な富士山。そして、よく見ると点在するいくつもの工場……。

「えっ、こんなに自然豊かな場所に工場?」と、一瞬違和感を抱いた方も多いのではないでしょうか。

でも、実はこの静岡県の立地こそが、工場を建てるうえで非常に魅力的な条件を備えているのです。

ではなぜ、美しい富士山のふもとに工場が集まるのか?
今回はその理由をわかりやすく解説していきます!

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  1. 綺麗な水が豊富にある
  2. 首都圏へのアクセスが良好
  3. まとめ

綺麗な水が豊富にある

え、綺麗な水が豊富にあるのが理由なの?

なんで水が、、、と思う方も多いかもしれません。

でも、実は綺麗な水は工場にとって非常に重要な資源なんです。

工場では製品をつくる過程で、大量の水を使います。たとえば、機械の洗浄や冷却。さらには食品・飲料工場では、そのまま製品に使われることもあります。

特に高い水準の純度が求められるのが半導体の製造です。
この分野では超純水と呼ばれる、ほぼすべてのミネラルや不純物を取り除いた水が不可欠で、少しでも不純物が残っていると、チップの品質や性能に影響が出てしまうのです。

富士山麓は、全国でも屈指の水の名産地として知られています。
富士山に降った雨や雪は、長い年月をかけて溶岩層を通り抜け、天然のフィルターを経た清らかな湧水となって地表に現れます。

富士山麓の地下水は、自然が長い時間をかけてろ過した超軟水。
そのため、純水や超純水の製造コストを抑えられ、工場にとっては非常に魅力的な環境となっているのです。

この自然の恩恵を受けた富士山の湧水は、口当たりがやわらかく、飲料水や食品加工に最適。

実際、静岡県内にはミネラルウォーターの採水地や、製茶・乳製品・飲料系の大手工場が多く建設されています。品質にこだわる企業にとって、ここはまさに理想の立地なのです。

富士山からの豊富で清らかな地下水を求めて、静岡東部には食品・飲料・半導体等様々な業界の大手企業の工場が集まっています。
地図はEsri, “World Topographic Map” [basemap]. ArcGIS Online.を引用・編集

静岡県の御殿場・三島地域には、リンガーハットや、MOWやPARMを製造する冨士森永乳業のアイス工場が立地し、さらに西の富士地域に目を向けると製紙大手の工場が集まっています。豊かな水資源を享受できる環境もあって、富士市の紙の生産量は全国第2位を誇ります。

また、富士山麓の西側・富士宮市では酪農が盛んで、北側の山梨県富士河口湖町では天然水の採水が盛んに行われています。

質が良い牛乳をたくさん製造するには、牛の協力が不可欠!良い水と良い飼料をたっぷり食べて育った牛はとても品質の良い牛乳を出すからです。

このように、富士山から湧き出る豊かな水資源が、富士山周辺における様々な産業の発展と集積を支えているのです。

首都圏へのアクセスが良好

富士山周辺地域は、良質な水資源に恵まれているだけでなく、東京・神奈川といった人々の消費が多い大都市商圏から車で1〜2時間ほどとアクセスも抜群

東京と名古屋を結ぶ東名高速道路が工場の近くを通っていることにより、製品の出荷が効率よく行え、工場にとってとても有利になる
画像はOka21000, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0より引用

この地域には東名・新東名高速道路東海道新幹線が通るため、物流や人材確保の面でも優れた利便性を誇ります。新幹線が通っていれば、東京や名古屋、大阪みたいな大都市から営業の人が工場に出張へ行きやすくなるので、ビジネス面でも都合がいいわけです。

高速道路が近くにあれば製品をスピーディーかつ低コストで首都圏市場に届けることができ、生産・流通の効率性が高まります。そういうわけか、御殿場インターや沼津インターには運送会社の営業所が数多くあり、効率よく物流を回すことが可能となっているのです。

加えて、首都圏と比べて土地代が安く、広い敷地が確保しやすいため、大規模な工場の建設にも適しています。

自然環境と都市機能を兼ね備えたこの地域は、まさに都会と田舎のいいとこ取りの理想的な工業立地なのです!

まとめ

美しい自然と最先端の産業が共存している富士山麓のエリアには、豊富で清らかな水資源と、首都圏への抜群のアクセスという、他の地域にはなかなか見られない立地条件が揃っています。

飲料や食品、製紙、さらには半導体といった幅広い分野の企業がこの地を選ぶ理由は明確です。自然がもたらす恩恵と都市への利便性、この2つを同時に享受できる静岡県は、まさに“ものづくりの理想郷”。

もし東名高速道路や東海道新幹線を通ることがあったら、ぜひ窓の外に目を向けてみてください!静岡といえば茶畑が連想されがちですが、せっかく静岡にいるなら茶畑の合間にある工場群にも注目してみるのも楽しそうです。そこには静岡の自然と産業が調和した、新しい風景が広がっているのです!

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