欧州放浪記⑨ ~美しい街アラホヴァ~


ガソリンスタンドを出発してしばらく走ると、道が徐々に山道へと変わり、周囲に見えていた家々も次第に少なくなっていきました。

30分ほど運転を続けていると、前方に美しい街並みが広がっているのが見えました。ちょうどデルフィに向かう途中でしたが、時間に余裕があったので、立ち寄ってみることにします。

☝前回のあらすじ
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  1. ギリシャ有数のスキーリゾート・アラホヴァ
  2. 老紳士との出逢い
  3. アラホヴァの街並み

ギリシャ有数のスキーリゾート・アラホヴァ

今回見つけた街はアラホヴァ(Αράχωβα・Arachova)という街で、ギリシャのヴィオティア県にあります。

世界遺産のデルフィ遺跡から近く、山がちの地形であるためギリシャ有数のスキーリゾート地として有名な街となっています。アテネからは直線距離で約115km、車で3時間の距離にある場所で、アテネから日帰り旅行で行く人も多いそうです。デルフィ遺跡にも近いので、ここで泊まる人も少なくないんだとか。

アラホヴァは9世紀に創設された街で、アラホヴァという名前は南スラヴ語群で「クルミの木」という意味だといわれています。昔も今も教会が多い街です。

道の途中にあった展望台で撮ったアラホヴァの街並み

老紳士との出逢い

早速、車を停めて散歩へ。街の外れに路駐スペースがあったのでそこに駐車します。

地図の一番左にある「P」に路駐しました

車を停めてまず目に飛び込んできたのは古風な石造りの家々。どの家も山の傾斜に沿って建てられており、赤茶色の屋根と白い壁がとても特徴的。標高950mと高いこともあってか澄んだ空気が心地よく、深呼吸をするたびに心も体もリフレッシュされるような清々しさを感じます。

工芸品や絨毯が名産品らしく、道沿いにはお土産屋さんがたくさん

街にはいくつか小さな教会がちらほらあり、どれも歴史を感じさせる佇まいです。9世紀からの歴史があるこの街では、教会は人々の生活の中心となり、昔も今も大切に守られていることがよくわかりますね。

中でも特にこの街で有名なのがアギオス・ゲオルギオス教会。石造りの塔が立ち、街のランドマークの一つとなっています。階段を登った丘の上にその教会と、街全体を見渡せる絶景ポイントがあるとのことだったので、さっそく上がってみることにしました。

264段の階段を上ります

急勾配の階段は息が上がるほどですが、頂上に辿り着くと、その苦労が報われるかのように広がる絶景。

かすかに雪化粧をまとった山々が遠くにそびえ、眼下にはアラホヴァの美しい街並みが広がっています。青く澄んだ空と緑の山々、そして赤茶色の屋根とのコントラストが、絵画のように見事に調和していてとても美しいです。

あいにくこの日は雲が多かったですが、天気の良い日にはコリンティアコス湾やペロポネソス半島も臨むことができるそうです!

この景色を見ていると、ギリシャのスキーリゾートとしての魅力が伝わってきます。もう少し早い時期だったら、雪に覆われた街を見ることができたのかな、さらに美しい景色が広がっていたことでしょう。

丘の上には、歴史の重みを感じさせるアギオス・ゲオルギオス教会という正教会の教会が静かに佇んでいます。

この教会は1870年8月1日に地震で倒壊しましたが、年月が過ぎ、再びその姿を取り戻したらしいです。近くに腰掛けていた一人の老紳士が語ってくれました。

この正教会は1676年に建てられた古き時代の証人。しかし残念ながらその扉は閉ざされ、中に足を踏み入れることは叶いませんでした。

教会の裏側はまだ雪がうっすら残っていました

教会のすぐ隣には古びた時計台がそびえ立っていて、その足元には2門の大砲が静かに据えられていました。

この大砲はギリシャ独立戦争のアラホヴァの戦い(1826年)で使われた大砲だと老紳士が教えてくれました。

当時ギリシャはトルコのオスマン帝国の領土で、オスマン帝国からの独立を勝ち取るためにギリシャ人が蜂起。ギリシャ第一共和政という暫定政府を設立しました。ナポレオン戦争後、ヨーロッパではナショナリズムの気運が高まっていたので、ギリシャ人もオスマン帝国から独立しようと考えている人が多かったのです。

この時、オスマン帝国と戦ったゲオルギオス・カライスカキス将軍は街の英雄として称えられ、教会の近くに彼の彫像が建てられていました。

戦闘の様子を描いた絵

観光客である僕たちにたくさんの昔話を語ってくれる老紳士。彼の瞳にはあたかも長い年月を超えて、教会が見守ってきた数々の出来事や人々の祈りが映し出されているかのような、深い思いが宿っているようです。

その静かな眼差しには、ただの建物以上に、この場所に刻まれた歴史や、再び立ち上がった教会への尊敬と誇りが感じられました。現地で色々な人と交流できるのもツアー旅行ではなかなか経験できない、自由旅行の良さの一つですね!

時を刻む鐘の音が風に乗って遠くまで響き渡る一方で、無言のまま佇む大砲は、過去の激動の日々を物語っているかのようです。教会の静寂と大砲の重厚さが、時代の流れと共に織りなす対照的な風景が、この場所に一層の歴史の深みを与えていました。

感傷に浸っていたその時、静けさを包んでいた街に、時計台の鐘が11時を告げました。少し早いですが、お昼を取るためにそろそろ街の中心に戻ろうと思います。

アラホヴァの街並み

階段を下りて街の中心に行くとカフェやお土産屋が立ち並んでいました。サントリーニ島よりは人がいたものの、歩いている人は少なく、街は静寂に包まれていました。まあこれくらい人が少ない方がかえって落ち着いていいのかも。

264段の階段を下りきった先にカフェがあったのでここで昼食を取ることにします。

階段を下りきってすぐ左にあるカフェです

お店に入ると美味しそうなパンやピザがずらり。扉を押し開けた瞬間、焼きたてのパンの香ばしい匂いが店内を満たし、ホッとするような温かみを感じました。外のひんやりした空気から解放されたその瞬間、日常の小さな贅沢に包まれた気分に。

今回はチーズパンを頼むことにしました。3ユーロ(約500円)でした。ホットワインもありましたが、二人とも運転するので今回は断念。。

店内はこぢんまりした作り
美味しかった😋
★ Check ★

名称:Bello Panini Bar
住所:中央ギリシャ地方ヴィオティア県ディストモ・アラホヴァ・アンティキラ市アラホヴァ パパイオアヌースクエア(Πλατεία Παπαϊωάννου, Αράχοβα 320 04)
Google評価:4.4/5 (62レビュー)
営業時間:7時00分~19時00分
価格帯:300円 - 1500円

アラホヴァは他にもお酒が有名で、ラコメロ(ρακόμελο)というリキュールを売っているお店もありました。ラコメロはギリシャで古くから親しまれてきた甘い蜂蜜酒で、寒い冬には体を温めるために飲まれることが多いそうです。

せっかくなので飲んでみたかったのですが、車があるので断念。車で旅行するときはお酒が飲めないということを覚悟しなければなりません。。

お昼を済ませた後、石畳の道をそぞろ歩きながら、街の散策を楽しみました。ヨーロッパの古い街並みがそのまま残るこの石畳の道は、異国情緒に包まれた独特の雰囲気があります。

時折、建物の隙間から吹き抜ける冬の冷たい風が頬を撫でるたびに、街全体が低く囁いているかのような不思議な感覚が広がります。

道端では地元の人たちが挨拶を交わす姿や、店の前で立ち話をしている様子が窺えました。地元の人たちの日常が感じられて、この場所に根ざした人々の生活が脈々と続いていることが伝わってきます。

穏やかなその風景を見ていると、旅人として訪れた僕たちも一時的にその暮らしの一部になったかのように感じられる、そんな不思議な感覚に包まれました。

異国の地にありながら、どこか懐かしさや安らぎを感じるこの風景。自然と運転の疲れを忘れ、心が解きほぐされていくのを感じました。足を止めて、ただその空気に浸りながら、ゆったりとした時間を過ごす。そんな瞬間が、この街の魅力をより一層深く心に刻み込むのかもしれません。

30分くらいで回れるかなと思っていましたが結局、アラホヴァには2時間くらい滞在していました。そろそろ時間が迫ってきているので次の目的地、デルフィ遺跡に向かいたいと思います!

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