毎年8月11日は山の日。
この祝日は「山の恩恵に感謝する」という目的が込められており、2016年の祝日法改正にともない日本の祝日の一つとなりました。
山の日といっても特に登山の予定はなかったのですが、せっかくの山の日なんだから富士山へ登りに行こう、とフィリピン人の友だちAから誘いがあり、思い切って富士山へ登る流れになりました。(ちなみに二人とも富士山へ登ったことはない)
富士登山について調べてみたら山小屋に1泊して行くのがおすすめとのことでした。ただ前後の日はあいにく二人とも予定が埋まっていたので、日帰りで登りに行くことに。
とはいえ、本当なら1泊2日で行くべきところを日帰りで行くわけなので、かなりハードなスケジュールとなります。少なく見積もっても朝早くから登山開始しないと当日中は帰ってこれないことが判明。朝早い時間に公共交通機関は運行していないので、車で行くことにしました。
ところがなんと、富士山の登山口は御殿場口を除き、すべてマイカー規制されていることが発覚。そういうわけで今回は御殿場口から登ってきました。

富士山へ登る際は基本的に吉田口・須走口・御殿場口・富士宮口からスタートすることになります。地図をみるとわかるとおり、御殿場口からの御殿場ルートが一番距離が長く、初心者には少し厳しいルートとなっています。登山開始時の標高も1440mであり、他の登山道とは圧倒的に険しいです。実際、富士登山する人の中で御殿場ルートを通って頂上に行く人は登山者全体の7%にしか満たないそうです。(2023年の富士山登山者数は221322人、うち御殿場ルート利用者は15479人)
丹沢や山梨の山を何度か登ったことがあるとはいえ、3000mを超える山の登山は初めてだったので正直いってかなりの挑戦でした。それを日帰りで行くわけなので、まさに修行といっても過言ではない山登りといえます。
いざ富士山へ!
午前5時、うっすらと東の空が明るくなりはじめた早朝、JR東海道線の沼津駅にて一緒に登山をするAをピックアップ。彼は静岡に住んでいたので、ちょうど神奈川との中間地点である沼津駅で待ち合わせすることになりました。
道中、スーパーマーケットのマックスバリュにて行動食を購入。ネットで調べてみるとナッツやチョコレート、プロテインバー、おにぎりを食べると良いと書いてあったのでそれらを全部買いました。常温品なので持ち運びできるし、場所もあまり取らないからおすすめです。
食料や水・料理は山頂のお店や途中の山小屋でも売っていますが、下界と比べるとかなり高いのであらかじめ用意しておくのがベストです!
登山開始
午前6時。だいぶ空が明るくなってきた頃、御殿場口駐車場に到着しました。早朝ということもあって途中渋滞に巻き込まれず、沼津駅からは1時間くらいで到着。
山の日とお盆が重なっているのもあってか、既に第二駐車場は満車。運良く出て行く車がいたのでそこに駐車。もともと御殿場口から登る人は少ないので、普段は満車状態になることはそれほどないらしいです。普通車は500台停められます。
それぞれ500mlの水を7本、リュックに入れていざ出発。
駐車場から登山口までは約150mほど。登山口の前に無料のトイレがあるので、ここでトイレを済ませておきます。
このトイレを過ぎると、新六合目までトイレがないので注意が必要です!
新六合目までは途中休憩も入れてだいたい4時間はかかるとみておいたほうがいいです。
富士山へ登るにはあらかじめKKdayというサイトで予約をし、オンライン登山チケット(無料)を発行しなければなりません。御殿場口から登るときは「【静岡県】富士山登山チケット(個人のお客様)」が必須で、チケットにあるQRコードを登山口にいるスタッフにスキャンしてもらう必要があります。
またその時、任意ではありますが通行料2000円(現金)を要求されます。この通行料の支払いは、オーバーツーリズム対策の一環として山梨県側の登山口では義務となっていますが、御殿場口と富士宮口ではいまのところは別に支払う必要のない任意的なものとなっています。
とはいえ、受付のおじさんに「払ってね」と強い口調で催促されるので、実際は殆どの人が2000円払って登っていきます 笑
2000円を払うと「富士山保全協力者証」という小さな木札がもらえます。ちょうどリュックのファスナーにつけられそうな感じだったので記念につけて登ります。


富士山の頂上
新六合目の休憩所に着いたのは朝10時頃。ちょうど4時間くらいかかりました。
富士山は他の山とは違い、砂利や石・小岩のある道を永遠と登るので、想像以上に時間がかかります。足が石に沈んでなかなか進まないし、靴の中に小石が入ってその度に靴を脱いで石を取り出すのでなかなか時間がかかります。
登っている途中、ブルドーザーとすれ違いました。このブルドーザーは富士山の山小屋で働いている人や物資、また怪我をした登山者を運ぶために使われている乗り物で、富士山の険しい悪路もすいすいと進むことができます。
すれ違うとき手を振ってみると、ブルドーザーに乗っていた運転手さん二人に「頑張ってください!」と声をかけられました。一度はこれに乗って頂上まで登ってみたいかもと思いながら登り続けていたら、気がつくとブルドーザーはあっという間に下へ行ってしまい見えなくなってしまいました。

登山口は標高が1400mなのでまあまあ涼しいですが、標高が2500mを超えていくと「涼しい」から「少し肌寒いかも」という感覚になります。ただ、何時間も歩いて体も暑くなっているのでそこまで肌寒いとは感じませんでした。むしろ暑がりの僕にはちょうどいい温度だったかもしれません。

下界みたいに暑くはないので水分補給をついつい怠りがちですが、それでも高山病予防で2、3口くらいは適度に水を飲むのがおすすめ。多少汗ばんで水分が出ていくので、4時間くらいはトイレを我慢するのはそれほど難しくないと思います。(ちなみに富士山のトイレは1回300円かかります)
山頂までの道のりでトイレを1回新六合目で使いました。バイオトイレということもあり、異臭がないか結構不安だったのですが、トイレに入ってみるとなんとヒノキの良い香りがするだけで悪臭はまったくしませんでした。それどころか、街中にある普通のトイレよりも綺麗で思わず感動!
水ではなくおがくずと微生物を利用して、し尿を分解するので比較的環境にも優しい作りになっています。
険しいジグザグ道を進むこと3時間。15時15分、登山口から9時間かけてようやく頂上にたどりつきました。

山頂には思っていたよりも人が多かったですが、何よりも外国人が想像以上に多かったです。剣ヶ峯の記念碑には4人ほど登山者がいたのですが自分以外(Aも外国人なので文字通り)外国人で、まるで外国にいるのではないかという錯覚に陥りました。

記念碑からの景色も楽しみ、そろそろ降りようかと準備していると台湾人女性とイタリア人青年に写真を撮ってくれないかと頼まれたので快く撮ることに。話してみると台湾人女性は日本旅行で一人で登りに来たとのこと。イタリア人青年の方は僕たちと年が同じくらいで、彼もまた旅行で記念に登りにきたらしいです。二人とも日本が好きだと言っていたので一人の日本人としてなんだか嬉しく思います。
そうこう話していると下から次々と外国人登山者が登ってきて写真を撮ってくれないかとまた頼まれました。そのうちの一人は日本人っぽい顔つきでしたが、さっきから僕たちが英語で話しているせいでお互い外国人だと思い込んでいました。しばらく話し込んでいるとやはりお互いが日本人であることが発覚し、お互いビックリ!
インバウンドの影響で外国人が増えているのは実感していましたが、ここまで来るともはや日本ではなく別の国にいるような感覚でした。お互い日本語がわかるのに英語で話してしまったりとなかなか面白い体験です。
フィリピン人との出逢い
剣ヶ峯から浅間大社に戻ると、大社で杖の刻印をやっているということだったので1000円で記念に刻印してもらいました。かなり丈夫な杖なので富士山だけじゃなく他の山でも使えそうです。
頂上にある椅子でくつろいでいると、Aがフィリピン国旗を掲げている団体を発見。フィリピン人かなと思ったAは彼らに声をかけにいきました。
どうやらフィリピンの人は外国に同胞(同じフィリピン人)を見かけると積極的に声をかけにいくようです。僕のオーストラリアにいるホストファミリーのフィリピン人家族も日本に来たとき、在日フィリピン人の人に話しかけていました。まあこれは日本人でも同じかもしれませんが、フィリピン人はとにかく明るくて積極的にコミュニケーションを取ってきがちです。
フィリピン人同士は大抵現地の言葉で話すようで、タガログ語とビサヤ語を使って話していました。Aによると彼らは仕事で東京に住んでいるそうで日本語もある程度話せるらしいです。日本語で話してみると、ぜひフィリピンへ行ってみてといわれました。次海外へ行く時はマニラにあるベニスグランドキャナルモールへ行ってみたいなと思いました。
せっかくなので彼らのフィリピン国旗をお借りして、一緒に写真をパシャリ📷

ベトナム人との出逢い
そうこうしていると気がつくとあっという間に17時になり、空が徐々に暗くなってきました。18時くらいには駐車場へ戻れるだろうと想定していたので、だいぶスケジュールがずれてしまいました。名残惜しさを感じながらも、ここで下山します。

二人ともライトを持ってきていたので最悪日付が変わるまでに戻れればいいか、と楽観視していましたが下りも相当時間がかかってしまうことに。何しろ石が靴の中に入り込んで痛いので頻繁に立ち止まって靴を脱がないといけなかったのです。
急なジグザグ坂を下っていると途中で、4人組のグループがライトもつけずに狭い道で座っているのを発見しました。大丈夫かなと思いながら声をかけるとただただ休んでいただけだったらしく、体調は崩していなかったようです。
話してみると彼らはベトナム人技能実習生で、自動車整備や介護の仕事をしているそうです。なんでも朝日を見たくて夜から弾丸で登りにきているらしく、途中で休憩をとっていたらしい。狭い道だったのでライトもつけないでいたら危ないのではないかと思いましたが、いちおうヘッドライトは持っていたので一安心。
別れ際、次海外に行くときはダナンへ遊びに来てと言われました。さっきもこんな下りがあったなと思いながら、彼らとかたい握手をして別れました。行きたいところがまた一つ増えていきそうです。

日本人との出逢い
険しいジグザグ道が終わると、今度は大砂走りに突入します。ここは下山専用の登山道で、1歩で3mも進むといわれるくらい急斜面な石と砂の道を下りていきます。
1歩で3mといっても、この砂の道は御殿場登山口までちょうど4kmも続くので割と時間がかかります。なんといっても歩いている途中靴の中に石がたくさん入り、数十歩あるいただけで都度靴を脱いで石を落とさなければなりませんでした。
いつまで経っても同じような景色なのでちょっと不安になります。勿論夜景は綺麗なのですが、下へ下っているのにずっと同じような景色が続いているとなるとちょっと不安を感じます。改めて富士山って大きいんだなあと思い知らされた瞬間でした。

写真下に見える光は下から登ってくる登山客のヘッドライトで、なんだか幻想的です
靴の中の石を取るために道に座っていると、上から何やら物音が近づいてきました。もしや落石かと思って慌てて立ち上がると、そこには上から猛スピードで下山する男性の姿が!
すれ違いざまに挨拶をされたので軽く話してみると、自分たちと同い年であることと趣味が一緒だったこともあり意気投合して、そのまま一緒に下山することになりました。
そこから1時間近くひたすら砂利道を下りつづけます。真っ暗で周りに何もない急斜面を1時間も一人で下っていくのは想像以上にメンタルがやられてたことでしょう。幸いにも会話は弾み、3人で会話を楽しみながら下山することができました。そして気がつけば御殿場口の入口にある大石茶屋へ無事に戻ってきました。
彼とは連絡先を交換し、また山で逢うことを約束しました。初めての富士登山でしたが、登山とは単に山へ登り頂上を目指すだけなのではなく、新たな人との出逢いの場でもあるということを強く実感させられました。この日の出来事が新たな挑戦の始まりであることを願いながら、それぞれ家路につくのでした。

(23:17)