いまや若者にとって欠かせないSNSとなっているのがInstagram(インスタグラム:インスタ)。写真や動画を投稿することによって、自分の日常を同級生や友だちなどと共有し、より身近に感じることができるアプリです。
特に難しい操作もなく簡単に投稿できるので、若者だけではなく中高年層など幅広い世代に使われているSNSです。みなさんの中にもInstagramやっている、という人も多いのではないでしょうか。ちなみに僕も使っています。最近だと80過ぎのおばあちゃんにも、Instagramを使いこなしている人もいるらしいのでオドロキですね 笑
2024年始めにはInstagram利用者数が全世界で20億人を突破。現在の地球人口がざっと81億人なので、ざっくり考えても世界中の4人に1人はInstagramをやっていることになります。その中でも18歳から24歳の利用者数は全体の31%を占めており、いまやミレニアル世代やZ世代にとってInstagramは必要不可欠なSNSとなっています。

図表内にあるInstagramのロゴは、メタ社作成のものを使用。
そんなInstagramですが友だちと情報交換したり、友だちとのつながりを維持していける便利なアプリである一方、Instagramを使うことでどうも人間は不幸になってきているのではないかとうすうす感じてきているのです。なぜそう感じるのか、今回はそのことについて考えていきたいなと思います。
インスタ映えを目指して
Instagramでは投稿した写真や動画は全世界に公開されるので、もしかしたらあなたの投稿に他のユーザーから”いいね”がたくさんもらえることもあるかもしれません。もし想像以上に”いいね”がたくさん付けられれば、あなたはきっとこの上なく満足し、もっともっと”いいね”がほしいと思うことでしょう。
これは承認欲求が満たされるからです。
承認欲求とは、自分のことを他者から認められたいという欲求のことで、強弱はあれど人間だったら誰もが持ち合わせているもの。
これが多少承認欲求が強いくらいならまだ問題ないのですが、あまりにも承認欲求が強すぎると大変なことになります。そして残念なことに特にInstagramを頻繁に使う人の中には、承認欲求が抑えきれないほど強い人も存在します。
”いいね”をもらうためだけに必要のないものまで買って無駄遣いをしてしまう。こんな生活を送っていると当然お金も貯まらずにカツカツ状態になってしまうので余裕はあまりなく、結果的に幸福度が下がってしまうのです。

麻薬並みの中毒性
InstagramなどのSNSの場合さらに厄介なのが、Instagramには”やめ時”がない点です。
ニューヨーク大学スターンスクール教授のアダム・アルター(Adam Alter)は、雑誌やテレビ番組、ゲームとは違ってSNSには、ユーザーに別の行動へ移させるような後押し、言い換えれば”SNSのやめ時”が殆どないことを指摘しています。
InstagramでもTwitterでも、スマホをスクロールすればコンテンツが次々と出てきて無限に時間を潰すことができますよね。
SNSに長時間没頭すればするほどその分、現実世界との交流や社会的つながりを減少させ、孤独感が感じやすくなる傾向があります。
これはゲーム依存症と同じです。ゲームのやりすぎで家族やリア友と過ごす時間がなくなったり、昼夜逆転生活を送り学校や仕事に支障が起きたり、課金をしすぎて経済的困窮に陥り、、、とゲーム中毒になった結果、不幸になってしまう人も少なくないですよね。
過度なSNS閲覧もゲーム依存症と同じで睡眠障害やストレスの原因にもなり、身体に悪影響を引き起こすので結果的に幸福とは言い難い状態になってしまいます。
もっともっと承認されたい
たとえば、あなたが100万円のセダン車を持っていたとします。あなたは愛車のセダンの写真を頻繁に撮り、よくInstagramに乗せていました。
ある日ふと、Instagramを見ていると1000万円以上はするであろう高級スポーツカーの写真が投稿されているのを偶然見つけました。
一体誰の車だろうと疑問に思ってよく見てみたら、なんと自分の幼馴染みの車だったのです。なんでも彼は起業に成功して、知らないあいだに高級スポーツカーを持てるほどの経済力が身についていたのです。
、、、もし自分がこんな経験をしたらどうでしょうか。もしかしたらその幼馴染みに対してある種の劣等感を抱いてしまうかもしれません。
「もっともっといい車を!」、「あいつみたいに高級スポーツカーを手に入れるんだ」というような感じで。
SNS上では色んな人が日常の様子をアップロードしています。中には自分よりも素敵で輝いている生活を送っていることをアピールしている人もいるかもしれません。ただ他者の生活に対して過剰反応することは精神衛生上まったく好ましくありません!
自己評価が歪み、完璧主義に陥りやすくなるからです。先述のお話みたいに自分と他者との比較が常に行われる環境は、心理的なストレスや不安を引き起こしてしまうのです。
ネット上で人気になりたいと思っている人や、他者との比較で自分を評価するインスタグラマーは、ネガティブな心理的結果を経験する傾向があります。これにより自尊心の低下だけでなく、抑うつ症状や社交不安を引き起こしてしまうことも。やはりInstagramにのめり込みすぎてしまうのは精神的にもあまりよくなさそうですね。
つながりを絶つのが難しい
元カノと別れたのに、Instagramでつながっちゃったままだからいつまで経っても元カノのストーリーや投稿が表示されてきて一向に未練を断ち切ることができない。次のステップに中々進むことができない。
こんな経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。
Instagramが流行り出す前はみんなLINEのタイムライン(今はLINE VOOMっていう名前なんですかね?)を使っていた感じがします。僕が高校2年生ぐらいまでの頃、つまり約7年ほど前の2017年頃までは、LINEのタイムラインに自分の日常を投稿して、学校の同級生や友だちと近況報告みたいなことをしあっていました。懐かしいですねぇ。
つまりInstagramが流行り出す前は、日常や想い出の共有は身内内で殆ど解決していたのです。
しかし、LINEのタイムラインと違うのは、InstagramはLINEと比べてオープンな環境にあるということです。
LINEのタイムラインは全体公開にすることもできるものの、どちらかといえば友人や家族といった身内を主なターゲットにしています。LINEのアプリでないとタイムラインを見ることはできませんし、その人の知り合いでなければ基本的に他人のタイムラインを覗くことは難しいでしょう。
それに対し、Instagramはインターネットで個人のアカウント名を検索すれば個々のアカウントを閲覧することができるので、不特定多数の人とつながりを持てる可能性を大いに秘めています。
「@12345_6789」のようなIDがInstagramのアカウント名です。非公開アカウントの”鍵垢”は相手からフォローされていないと閲覧できませんが、アカウント名やトップ画像は見ることができます。
確かに多くの人とつながれるのはSNSの大きなメリットの一つです。数多くの人とつながることで自分の知見が広がったり、成長につながることもあるかもしれません。
とはいえ人間、使える時間や体力が限られている中で、多くの人たちとつながり続けるのはかなり難しいことです。いわゆるSNS疲れというやつです。自分にとって大して重要でなかったり、大して仲良くない人にも時間や体力をかけすぎた結果、もしかしたら本当に大切な人とのコミュニケーションが希薄になってしまうかもしれない。
Instagramは素晴らしいコミュニケーションツールであり、世界中の人々とつながる機会を提供しているアプリです。しかし、その裏側には精神的健全性を損なう危険性や不幸になる要因が孕んでいます。
Instagramを含め、SNSはあくまで他者とのつながりのきっかけを作ったり、コミュニケーションを取る道具でしかありません。適度なバランスを保ち、心の健康を重視することが重要なのではないでしょうか。
参考文献
・黒田尚子、「SNSで『いいね!』を欲しがる人は、なぜ無駄遣いが多いのか」、日経BOOKプラス、2023年8月4日
・樺沢紫苑、「SNSをチェックすればするほど『幸福度』が減る理由」、ダイヤモンドオンライン、2020年7月4日
・Zara Abrams, “How can we minimize Instagram’s harmful effects?“, American Psychological Association, 2021年12月2日