ロシアは既に”負けている”

ウクライナとロシアの戦争が始まって1年半経ちましたが、未だに終わりの兆しが見えてきませんね。これまではお互い一進一退を繰り返していたので、膠着状態に陥っているように見えました。ウクライナの抵抗も強く、ついこないだウクライナ軍がヘルソン(Kherson)を奪還しましたが、ロシアの攻撃も激しいため、戦いが長期戦になるのは間違いないと思います。

戦争終結後の両国の情勢を予測するのは非常に難しいですが、今の時点で一つ断定できるのは、ロシアが既に”負けている”ことです。

「まだ決着も付いてないのにどうして?」

と疑問に抱く方も多いと思いますが、これにはきちんとした理由があります。

今回は、ロシアが既に戦争で”負けている”理由を解説していこうと思います!

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  1. そもそも戦争の背景は?
  2. ロシアの目的
  3. Mission failed
  4. 参考文献

そもそも戦争の背景は?

結論を言うと、ロシアが事実上、既に”負けている”理由は、ロシアが戦争の目的を達成できなかったからです。

そもそも、何故ロシアは戦争を始める必要があったのでしょう?

色々ありますが、一番大きな要因は「NATOの東方拡大」による脅威から自国を守るためです。

NATOとは北大西洋条約機構の略で、アメリカやフランスを中心とした「西側諸国」の軍事同盟です。第二次世界大戦後の1949年に設立されました。

これに対抗して結成されたのがソ連を中心とした「東側諸国」の軍事同盟、ワルシャワ条約機構(WTO)。1955年にソ連が結成し、1991年に解体。

この二つのグループは政治的価値観(イデオロギー)が違い、対立関係にあったため、お互いを”脅威”と感じていました。この時の状況を冷戦といいます。

WTOの解散で東側諸国の勢力は弱体化していきましたが、ソ連の後釜であるロシアはそこそこ国力があったため、現在もロシアとアメリカの睨み合いが続いています。(冷戦の終結とソ連崩壊・ロシア連邦の成立)

冷戦が終わると、弱体化した旧ソ連構成国や一部の東側諸国はNATOへの加盟を実現させます。

NATOの拡大(1949-2004) 旧ソ連国も続々NATOへ 
Brejnev氏作成, Wikimedia Commonsより引用
青:NATO加盟国 赤:CSTO(ロシアを中心とした軍事同盟)加盟国 紫:NATO加盟希望国 
Starfire25
氏作成, Wikimedia Commonsより引用

これにより何が起きたかというと、簡単に言えば、ロシアと同じ価値観を持つ仲間が減っていったのです。当時の東側諸国は、自分たちに過剰な圧力と支配を続けていたソ連・ロシアに嫌気がさしていたので、どんどんドミノが倒れていくみたいに西側へシフトチェンジしていきました。そして気付けば、なんと隣国のウクライナも対立関係にあるNATOへの加盟を希望するように!

ウクライナは旧ソ連の中で二番目に多い人口を誇ります。人口が多ければそれに比例して経済規模も大きくなるので、ロシアにとってウクライナは仲間にしておきたい重要な国なんです。

☑ Point

ちなみに一番目はロシア、三番目はベラルーシ。ベラルーシはロシアの事実上の傀儡国です。。。

ロシアの目的

ニュースでクレムリンの軍事パレードや観閲式を観ていると、ロシアはすごく強そうな国なんだなと思いがちですが、実はロシアはああ見えて、周辺国の台頭を脅威に感じている国なんですよね。歴史を遡ると、西からは19世紀にフランスのナポレオンが、20世紀にはナチス・ドイツのヒトラーがロシアに侵攻しています。さらに東からは13世紀にモンゴル人が襲来。ロシア史で「タタールの軛(くびき)」と呼ばれていた時代があったのは高校の時、世界史Bで習った通りです。この時代、ロシアはモンゴルに臣従していました。

19世紀にフランス、20世紀にドイツ。じゃあ21世紀は・・・?、と考えたときに、NATOがロシアにとって脅威になるのではないか、と考えるのは決しておかしなことではないでしょう。

こういった歴史的背景があるためロシアとしては、自国の周りは自分と同じ価値観を共有する味方で固めておきたいのです。特にウクライナはロシアの隣にあって、NATO加盟国とロシアの中間にある国。NATOが拡張している中、ウクライナまでNATOに加盟してしまえば、ロシアはNATOと隣り合わせになってしまうので、ロシアは何が何でもウクライナを自国寄りにしておきたいのです。

さらに、ウクライナ人とロシア人はルーツが同じルーシ族で、兄弟国と呼ばれている国。ロシアには多くのウクライナ人がいるし、ウクライナにも多くのロシア人がいます。ソ連崩壊で、これまでソ連という一つの国だったロシアとウクライナが別々の国になった時は、”文明的離婚(Civilized divorce)”と揶揄されていたほどです。

そんな感じなのでロシアは、ウクライナが自国寄りにならないのであれば、ウクライナ自体を併合するか、ウクライナの政権を親露派(ロシア寄り)に変えようと考えているのです。実際、過去にもロシアは、ロシア系住民の多いクリミア(ウクライナの一部)を一方的に併合したことがあります。(2014年)

☑ Point

当時、ウクライナの親露派大統領が倒れ、親米派の大統領が当選したため、ロシア系住民の多いクリミア半島では一部の住民から強い反発があり、武力衝突に発展しました。そしてそのロシア系住民の保護を名目に、住民投票を経てロシアはクリミアを併合しました。が、投票の不正疑惑や、そもそも住民投票自体がウクライナの憲法に違憲するとして、多くの国がこの投票に異議を唱えています。

Mission failed

領土の一部を半ば一方的に奪われたウクライナは、当然ロシアと関係が悪化していきます。これまでNATOの加盟を支持していた国民が3~40%(2014)しかいなかったウクライナが、2017年6月の世論調査では69%の国民がNATOの加盟を支持するようになりました。

ロシア系住民の多かったクリミアが奪われたことを加味しても、NATO支持者が増えた原因がロシアにあるのは明らかです。

その後もいざこざが続き、2022年、ついにロシアはウクライナへ侵攻します。ロシアではこの戦争を「特別軍事作戦」と呼んでいて、今でも「ウクライナの武装解除」を本気で考えています。

しかし、侵攻によりロシアは国際的反発と制裁を受け、ウクライナに資金や武器を提供する国が増えてしまいました。ウクライナの武装解除・治安維持を名目に軍事作戦を行ったのに、かえってウクライナ軍を強くしてしまうことに。退却時にロシアの前線部隊が残した武器や戦車もウクライナに鹵獲されたので、ロシア軍の状態もバレてしまいました。

自国の国際的地位低下、軍事力のリークに加えてさらにロシアは、NATOの東方拡大を許してしまうという致命的なミスを犯してしまいます。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、2023年4月4日にフィンランドがNATOへ加盟、スウェーデンも加盟審査待ちの状態です。これによりロシアは、NATOと国境線を接してしまうことに。NATOの拡大を防ぎたかったのに、逆の結末になってしまいましたね。

ここまで長期戦になり、世界的に大きな影響を与えてしまうと、ロシアも引くに引けません。なので、ロシアもそう簡単に諦めないとは思いますが、ウクライナに力で勝とうが負けようが、当初の目的であるNATOの東方拡大を防げなかった時点で、ロシアはもう既に”負けている”とはっきり言えるのです。

「プーチンよ、ウクライナから撤退しろ」のスローガン
チェコ・プラハにて 筆者撮影(2023.2)

参考文献

・Scott Bevan, “Ukraine, Georgia NATO membership a ‘direct threat to Russia’“, ABC News, 2008年4月5日

・服部倫卓・原田義也、「ウクライナを知るための65章」、明石書店、2018年10月

・イザベル・ファン・ブリューゲン、「ロシアはウクライナを武装解除するつもりで先進兵器大国にしてしまった──ワグネル創設者」、ニューズウィーク日本版、2023年5月25日

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