【隠された真実】「英雄たちである」アメリカ歴代大統領の裏の顔とは?

リンカーン、ワシントン、F・ルーズベルト

多くのアメリカの歴史家は、この三人の大統領がアメリカの歴史において最高の大統領であると認識しています。そしてアメリカ人ではない私たちも「まんが学習シリーズ」や「世界の伝記」などを通じて偉大な功績を残した人たちなんだという印象を持ちがちだと思います。

しかし、それは表面的な側面しか見ていないように思えます。

たとえば、インド独立の父・ガンジーはカースト最下位にある不可触民の差別撤廃を訴えた英雄として称えられている人物ですが、実際は差別撤廃を唱えながら黒人のことを「野蛮人だ」と差別していたという裏の顔があります。こうしたことから、ガーナのガーナ大学の敷地内にあったガンジー像が撤去されたことがあります。

アメリカの指導者たちも例外ではなく、国の「英雄」と称えられている人物の中には世の中にあまり知られてない闇の部分が存在しており、ふだん私たちがイメージしている「偉人像」とは大きく異なっていることが多いのです。

今回はアメリカで英雄視されている3人の歴代大統領の、あまり知られていない「裏の顔」について解説していきます!

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  1. 「建国の父」
  2. 「奴隷解放の父」の真実
  3. 「日本人が好戦的なのは彼らの脳みそが劣っているからだ」
  4. 参考文献

「建国の父」

アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンは「建国の父」として知られており、 アメリカ史に名を残した人物としてラシュモア山に彼の彫像があります。

2022年のシエナ大学の調査によると、アメリカ歴代大統領の中でワシントンは3番目に偉大な大統領としてアメリカ国内で広く認識されています。実際、アメリカの首都のワシントンD.Cのワシントンとは彼の名前からとられており、ワシントンはアメリカ国民の中でも偉大な大統領として英雄視されているんです。

しかし「英雄」の姿とは裏腹に、彼の功績には負の遺産といえるようなものも多くあります。その代表例として奴隷制について取り上げます。

アメリカが独立し、ワシントンが大統領に就任した時代では、奴隷を所有することが認められた奴隷制度が存在していたのですが、年月が経つにつれてワシントンは奴隷制度が道徳的、倫理的に間違っているのではないかと考えはじめたのです。

そして、晩年の1799年には自分が所有している奴隷を解放すると自身の遺言書に書きました。

Upon the decease of my wife, it is my Will & desire that all the Slaves which I hold in my own right, shall receive their freedom. 

妻の死去により、私が所有しているすべての奴隷は、自由を享受するものとする。それが私の意志と願望である。

National Archives, “George Washington’s Last Will and Testament, 9 July 1799“, 1799年7月9日

しかし、奴隷を解放したいという意志があったのにもかかわらず、彼が政界にいた時は奴隷解放や、奴隷解放のための政策を実行することは、「奴隷制の廃止は国家存続に大きく影響する」として一度もありませんでした。このようにワシントンには奴隷制度を事実上、容認してきた過去があるのです。

「奴隷解放の父」の真実

1863年、奴隷解放宣言

歴史の授業でこんな感じで、年号とセットで覚えた方も多いかと思います。そう、黒人奴隷が自由の身になることを許された奴隷解放宣言のことです。南北戦争時にリンカーンが発令したこの宣言により、彼は「奴隷解放の父」として歴史の一頁に刻まれることになりました。

☑ Point

南北戦争(1861-1865)はアメリカ合衆国領域内で発生した内戦のことで、奴隷制度の存続をめぐって起きた対立がきっかけで勃発!北部・南部とアメリカが南北でわかれるように分裂し、リンカーンは北部(アメリカ合衆国)の大統領だった。

「ワシントンは奴隷制度を廃止しなかったけど、リンカーンは黒人奴隷の解放に尽力した『奴隷解放の父』だ!」

、、、と考えている人も少なくないと思いますが、本当はこの奴隷解放宣言も北部(アメリカ合衆国)が内戦の戦局を有利に進めるために行ったものにすぎず、リンカーンが奴隷制に疑問を持って廃止したわけではありませんでした。実際にその宣言を読んでいきましょうか。

西暦1863年1月1日の時点で、その人民が合衆国に対する反逆状態にあるいずれかの州もしくは州の指定された地域において、奴隷とされている すべての者は、同日をもって、そして永遠に、自由の身となる。

American center japan, 「『奴隷解放宣言』(1863年)

これは奴隷解放宣言の一番最初のところに書いてある文章ですが、そこには「反逆状態にあるいずれの州、もしくは州の指定された地域において」”のみ”奴隷が解放されると言及しています。北部と反逆状態にあるのは敵である南部なので、これらの州は南部の11州を指します。(アメリカ連合国)

しかし北部(アメリカ合衆国)の中には、奴隷制度を存続しておきながら合衆国に留まった州も存在していました。それが

  • デラウェア州
  • メリーランド州
  • ケンタッキー州
  • ミズーリ州

です。これらの州は合衆国に留まっていたので、「合衆国に対する反逆状態にある州」ではありません。つまり、

「奴隷解放」といってもすべての奴隷が解放されたわけではなく、この4州にいる黒人奴隷は解放の対象外だったのです。

ここまで聞くとリンカーンの「奴隷解放の父」のイメージは崩壊間違いないですが、さらに付け加えると、リンカーンは

「黒人が白人と同等の権利を持つべきではない」

と本気で考えていた人物ですし、ほかにもアメリカにもともと住んでいた先住民を強制収容所に放り込んだり、白人に対して反乱した38人の先住民を処刑したという負の遺産が存在しています。

リンカーンが命じたダコタ族38人の処刑はアメリカ史上、最大の大量処刑となった
(画像はWikimedia Commonsより引用)

「奴隷解放の父」と呼ばれ、歴史上最も偉大な大統領で一位に選ばれたことがあるリンカーンですが、このような真っ黒な歴史があることは知っておくべきでしょう。

「日本人が好戦的なのは彼らの脳みそが劣っているからだ」

世界恐慌からアメリカの経済を回復させ、アメリカ史上唯一4回も大統領に当選したフランクリン・ルーズベルト。ルーズベルトのニューディール政策は中学の歴史の授業でも習うほど有名な経済政策です。

世界恐慌、第二次世界大戦を経験したルーズベルトはアメリカ史上、最長の任期を全うした大統領で国民からは多くの支持を得ていました。しかしその反面で、ルーズベルトが行ってきたことにも暗い負の遺産があることはご存知だったでしょうか?

日系人の強制収容はそのうちのひとつですが、なかでも優生思想に基づいた彼の特定の人種に対する人種差別的言動はあまり知られていません。

  • 「ヨーロッパの正統な血筋が少しでも入っている地域は利益がもたらされるだろう。」
  • 「ある一つの特定の職業や組織、場所にユダヤ人が多すぎるのは望ましくない。アメリカはもともと白人でプロテスタントが統治している国であり、今後もそうあるべきだ。ユダヤ人には全体的に生来の好ましくない性質がある。」

この発言、すべてルーズベルトによって発せられたものです。

第二次世界大戦中、連合国陣営に所属していたアメリカはドイツに勝利し、ドイツのナチス独裁体制を終わりへと導きました。そのため、

「アメリカはナチス・ドイツによって酷い扱いを受けていたユダヤ人を解放した」

と思い込まれることも多いですが、実状はまったく異なっていました。アメリカに来ようとしたユダヤ人難民に対する扱いも良いものだったと言えませんでしたし、そもそもアメリカはアウシュビッツ収容所に通じる鉄道を空爆できたのにもかかわらずしなかったわけですから、、、

 ルーズベルトのユダヤ人に対する不愉快な発言は、一貫していくつかの関連した観念のいずれかを反映していた。すなわち、単一の職業、機関、地理的地域にユダヤ人が多すぎるのは望ましくない、アメリカはもともと圧倒的に白人でプロテスタントの国であり、今後もそうあるべきだ、ユダヤ人には全体として生来不快な性質がある、ということである。

Matt Lebovic, “Historian: New evidence shows FDR’s bigotry derailed many Holocaust rescue plans”The Times of Israel, 2019年11月4日

これは歴史学者のラファエル・メドフ(Rafael Medoff)の発言ですが、このラファエルの文章からも読み取れるように、ラファエルはルーズベルトが日常的に人種差別的発言を行っていたことを指摘しています。

事実、ルーズベルトはこのような意見にも本気で賛同していた人物でした。

「日本人が好戦的なのは彼らの脳みそが2000年劣っているからである」

この発言を行ったアメリカの著名な自然人類学者であるアレス・ハードリチカ(Aleš Hrdlička)は、白人種の優位性を確信しており、人種的アイデンティティに異様なほどに執着していた人物でした。日本による真珠湾攻撃(1941)の直後、ハードリチカはルーズベルトにこのような手紙を書いていました。

日本人の脳みそが我々のよりも進化が2000年遅れている、というのは日本人が生まれつき好戦的であるからであり、他の人種に比べて進化の発達レベルが低いことの証拠である。

この意見にルーズベルトは大いに賛同し、他人種との大量混血によって日本人をアメリカから排除できるかどうかを大真面目でハードリチカに尋ねたとのこと。

世界史の漫画では、ルーズベルトはさも「正義のヒーロー」のように描かれがちですが、実際は人種差別主義というかなりダークな側面を持っていた。そうした事実も語られていくべきなのではないでしょうか。

戦勝を喜んでキスをしあうニューヨークの若者

参考文献

・Siena College Research Institute, “American Presidents: Greatest and Worst“, 2022年6月22日

・NATIONAL ARCHIVES, “GEORGE WASHINGTON’S LAST WILL AND TESTAMENT, 9 JULY 1799“, 1799年7月9日

・Mount Vernon, “Washington’s Changing Views on Slavery

・ヒストリーチャンネル, ”5 Things You May Not Know About Abraham Lincoln, Slavery and Emancipation”, Sarah Pruitt, 2012年9月21日

・Tablet Magazine, “New Documents Reveal FDR’s Eugenic Project to ‘Resettle’ Jews During World War II“, Steve Usdin, 2018年4月30日

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