- 「就職先、本当にここでいいのかな」
- 「もうすぐ社会人だけど本当にやっていけるのかな」
大学生に限った話ではないですが、多くの人は自分の将来や現状に対して不安に思っています。特に殆どの大学生にとって大学で過ごす4年間は社会人になる前の最後の学生生活となるので、なおさら将来に対する不安や「このまま大学生活を終えて社会人として生きていくことができるのかな」といった感情を抱いている人も多いかと思います。
実際に僕もそのうちの一人で、今まさに大学生最後の夏休み真っ只中なのですが、将来に対する期待と同じくらい不安もあります。就職先が決まったとは言え、学生と社会人はまったく違います。社会人として本当に活躍できるのか、ちゃんとやっていけるのかという気持ちが心の中にもやもやと霧のように包みこんでいる感覚。
こうやって自問自答しているときにふとあることに気付いたんです。大学生ってロマン主義者に似ているんじゃないかなって。
「急にわけのわからないことを言い出してるな笑」と思ってる方も多いと思いますが、説明させて下さい。まず「ロマン主義者」とはどういう人たちなのでしょう?
ロマン主義とは
一言でいえばロマン主義の思想や考えを持っている人のことです。
ロマン主義とは18世紀後半から19世紀前半(諸説ありますが大体、1770年から1848年までを指すこともあるそうです)にかけて西洋で生まれた文学や芸術の概念で、個人の自由や感情、自然や空想的なものを重視する思想でした。日本語でも「ロマンがある」や「ロマンチックな映画」といったふうに「ロマン(ス)」という単語が使われていますが、ロマン主義の「ロマン」はこの「ロマン」と同じで空想的なものや物語的なものを指しています。
ロマンとは元々「ロマンス語で書かれたもの」という意味なんですが、この「ロマン」というのはもともと古代ローマの大衆文化を指していました。そこから派生してフランスやドイツでは「ロマン=ロマンス語で書かれた小説」と長いあいだ認識されるようになりました。
ロマンス語とは簡単に言うと、フランス語やスペイン語、イタリア語のご先祖様となる言語。
こうした古代ローマの大衆文化からロマンス(ロマンス語で書かれた伝奇物語という意味)という文学のジャンルが生まれて、具体的には冒険物語や主人への献身、宮廷風恋愛をテーマとした小説が多く書かれました。ロマンスやロマンチック(romantic, ロマンスの形容詞)と聞いて恋愛を思い浮かべるのはこういった背景があるからです!
恋愛物語や冒険物語というところからもわかるように、ロマンスは自由や理想を追求する精神や、自然のように空想的なものを対象としていました。このロマンスという文学ジャンルを土台としてロマン主義が誕生していきます。
ロマン主義の背景
ロマン主義が成立した18世紀前半の西洋社会は、庶民が貴族や王といった権力者を革命によって倒す時代でした。
ロマン主義が誕生したきっかけの一つにフランス革命(1789-1795)があります。フランス革命の詳細はここでは省きますが、フランス革命によって「王様の言うことは絶対だ!」という感じで王様が国を統治していた絶対王制という仕組みが廃止され、代わりに一般庶民(第三身分と呼ばれていました)はこの仕組みから解放され、基本的人権や個人の自由を手にすることができました。

当時、フランス革命が民衆の間でどのように受け入れられていたのか、歴史家のアルバート・ハンコック(Albert Elmer Hancock, 1870-1915)はこう説明しています。
「フランス革命は絶対王政の圧政に苦しんだ人々や、慈愛の精神を熱烈に愛する人々、人間らしさを言葉にすることを使命とする詩人たちによって、喜びと喝采をもって歓迎された。」
Albert Elmer Hancock (1899), “The French Revolution and the English Poets: A Study in Historical Criticism.” New York: Henry Holt and Company
このように、フランス革命では王様や貴族のような絶対的権力者によって抑圧されていた「個性」や「人間らしさ」が解放され、こうした歴史的背景の中でロマン主義は成立していきました。「人間が人間を支配するのはおかしい!」という考えから自然や愛を崇拝し、かつてロマンス文学で描かれていたような空想的で幻想的な世界に人々は惹かれていくようになりました。
ロマン主義が個性の尊重や人間らしさ、感情、自然崇拝や空想的事物を重きに置いているのはこのフランス革命の影響を受けているからだといえるのです。
大学生はロマン主義者に似ている
前置きが長くなってしまいました汗
僕は大学で文学を専攻していて、いちおうロマン主義についても一通り調べているつもりなんですが、調べれば調べるほど大学生ってロマン主義者に似ている、いやむしろ大学生ってロマン主義者なんじゃないかって感じるようになりました。
絶対王政下からの解放、革命による混乱。
この頃には既に産業革命が発生していて1830年には世界初の鉄道がイギリスで開業しました。科学の進歩によって生活様式も進化していき、ロマン主義の掲げる「感受性」や「非合理性」とは反対の合理性(効率よく無駄なく行動すること)が求められていく時代に。
めまぐるしく社会が変化していく中で、当時の西洋の人たちはこんな悩みや不安を抱えていたはずです。
「これまでとはまったく違う生き方が求められているけれども、果たしてちゃんとやっていけるだろうか」
この悩みって多くの大学生の胸の内にある不安と似ていませんか?
「もうすぐ卒業して社会人になるけれども、果たしてちゃんとやっていけるだろうか」
こうやって考えてみると、自分の将来に対して期待や不安を抱いている人が多い大学生ってロマン主義者なんだな、と僕は感じました。
また付け加えていえば、最近だとコロナの影響で以前とは違う新しい社会に変わりつつあります。そういう意味でいえば現在僕たちが生きている時代には「ロマン主義者」が多くなっているのではないでしょうか。
参考文献
・Literature Times (2021.11/2), “What were the Impacts of French Revolution on Romantic Poetry?“