「生活保護の人が生きてても僕は別に得しない。猫は生きてれば得。」
「自分にとって必要のない命は軽い。ホームレスの命はどうでもいい。」
みなさんはこの発言を覚えていますか?
これは去年の八月に炎上したYouTuberのメンタリストDaiGoのホームレスをめぐる発言ですが、今さらながらこの発言についてよくよく考えてみたら色々おかしなと思うところがいくつかあったのでちょっとここに書き留めてみました。
炎上発言について
まず、DaiGoが炎上した経緯について改めておさらいしておきます。
DaiGoはYouTubeや自身の運営するサイトなどで心理学に基づいた様々な情報を発信しており、アドバイザーとして活躍している人物です。大学時代に心理学について深く勉強していたようで、その努力は彼の主催する有料サービスである「Dラボ」の会員数の多さからも窺うことができます。
YouTubeのチャンネル登録者数も228万人(2022.2)と非常に多く、またマッチングアプリの「with」の監修や新潟リハビリテーション大学で特任教授として学生に教えていたこともあり、若年層のあいだでは人気で知名度がそこそこ高い人物だといえます。
さて、今回炎上したDaiGoのホームレスをめぐる発言は著名人や団体から「差別的だ」や「優性思想を助長する」といった感じで厳しく批判され、一時はホームレス自立を支援する複数の人権団体が当時の総理大臣である菅義偉に「生活困窮者支援団体による緊急声明」を発表するまでにいたりました。どんな発言だったか今一度確認するために問題となったDaiGoの”炎上発言”をWikipediaから引用しました。
僕は生活保護の人たちにお金をはらうために税金を納めてるんじゃないからね。生活保護の人達に食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしいと僕は思うんで。生活保護の人生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで。
猫が道端で伸びてればかわいいもんだけど、ホームレスのおっさんが伸びてると、なんでこいつ我が物顔でダンボール引いて寝てんだろって思うもんね。自分にとって必要のない命は軽いんで、ホームレスの命はどうでもいい。
いない方がいいじゃん。猫はでもかわいいじゃん。犯罪者殺すのだって同じですよ。群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きてるんですよ。犯罪者が社会にいるのは問題だし、皆に害があるでしょ。だから殺すんですよ。同じです。
ホームレスって言っちゃ悪いけど、どちらかっていうといない方がよくない?皆確かに命は大事って思ってるよ。人権もあるから、形上、大事ですよ。でもいない方がよくない?正直。邪魔だし、プラスになんないし、臭いし、治安悪くなるし。
【超激辛】科学的にバッサリ斬られたい人のための質疑応答
こんなふうにホームレスの人々に対してかなり差別的な発言を行ったDaiGoですが、ここで僕がおかしいぞと思ったことをバッサリ言っていこうかと思います。
1.納税は国民の義務である
発言の冒頭にある「生活保護受給者のために税金を払っているわけではない」という部分ですが、DaiGoは他にもTwitterで自分は高額納税者だから税金の使い道について低額納税者よりも口出しする権利があるべきだということをほのめかしたツイートをしています。
先述のように、DaiGoは有料サービスや自ら執筆した書籍の印税などでかなりの額を稼いでいると思われます。いくら稼いでいるにせよ、努力なしではここまで有名になったり富を築き上げることはできなかったでしょうから、彼の成し遂げた努力は今回の炎上発言とは別として正当に評価されるべきだと思います。
しかし、この彼のツイートってよくよく考えてみたらおかしいんですよね。そもそも納税は国民の義務なのだから。人によって納税額の多い・少ないの差があれど、納税は義務なので別に威張ることではないのです。国民の当然の責務です。また日本は累進課税制度を導入しているので、より多く稼いだ人がより多額の税金を納めるのは当然のこと。高額納税者が国家を支えているのは事実ですが、だからといって低額納税者に対して傲慢な態度を取るのはおかしい。僕たちが食べている食べ物や身の回りのものも低額納税者が作っているものが多いだろうし結局、高額納税者も低額納税者もお互い助け合って生活しているわけです。
そもそも、高額納税者が税金の使い道についてあれこれ口出しできる社会になったらそれこそ社会が崩壊します。金持ちが貧困層を搾取する、富裕層と貧困層の二極化された格差社会が拡がっていくだけです。DaiGoの差別発言には自分が一般人よりもかなり多く稼いでいるんだという優越感に起因しているようにみえます。
2.生活保護は素晴らしい制度
DaiGoは「生活保護の人生きてても僕は別に得しない」と発言していますが、それは完全に間違っていると思います。日本に住んでいるならば、生活保護受給者が生活を営むことによって間接的にですが必ず得します。
なぜか。
それは単純な話で、生活保護費を受け取った生活保護受給者が生活費としてどこかでお金を落とすことにより社会の中で間接的にお金が循環し、微々たるものですが結果的に経済を活性化することができるからです。生活保護費は国が支出するものなのである意味、不況時に国が行う公共事業と性質が似ているといえます。

公共事業はデフレーション(物価低下やそれにともなってお給料が少なくなる現象)から脱却するために太古の昔から行われてきました。たとえば、古代ローマのネロ帝は公共浴場や道路などのインフラ整備を帝国政府の財政支出で行った結果、雇用の提供や産業の刺激を促し、不況を乗り切ることに成功しました。(Henry Joseph “Harry” Haskell “The New Deal in Old Rome“ ミーゼス研究所 p.109)
他にも世界恐慌時のアメリカのニューディール政策のように、不景気の時に公共事業を積極的に行うことで失業者を減らし、経済回復を促していることは歴史が証明しています。
このように、国が行う生活保護制度は間接的に生活困窮者の経済的自立を導くだけではなく、経済全体をも潤す可能性を秘めています。
勿論、生活保護費の不正受給は厳正に取り締まるべきだし、不正には然るべき処置を執るべきです。また、働く能力がある人はいつまでも生活保護費だけに頼るのではなく生活保護費をもとに職を探し、自立していくべきだと思います。しかし、生活保護制度自体は停滞した経済を刺激するので、廃止してしまえばいいというよりかはむしろ続けていくべき素晴らしい制度なのです。
3.誰にでもホームレスになってしまう可能性がある
DaiGoや僕たちをふくめ、日本に住んでいる多くの人は生命維持が困難な、死んでしまうほどの貧困には悩まされていないと思います。ホームレスの割合も諸外国と比べれば日本は格段に低いです。
しかし、それは僕たちが比較的恵まれた日本に住んでいるからそうならなかっただけであって、環境が違えば能力があっても本人の意志とは無関係に職に就けずホームレスになってしまう可能性が十分にありえたのです。仮にDaiGoが日本ではなくロシアやアフリカなどで生まれ育ったとしたら、大金を手にする実力があってもそれを発揮できる豊かな環境に恵まれることのなく、もしかしたら今頃ホームレスになっていたかもしれない。僕たちが比較的豊かな生活を送ることのできるその背景には、日本という諸外国と比べて比較的豊かな国に住んでいることがあるといえるのです。
ホームレスになってしまう原因として怠惰など本人の責任によるものがあります。
しかしそれと同時に、ホームレスになってしまう要因として社会や周囲の環境によって大きく左右されることがあるということも忘れてはいけないと思います。ホームレスを生み出してしまう社会にも問題や責任があるのではないでしょうか。
4.優生思想
- 「自分にとって必要のない命は軽いんで、ホームレスの命はどうでもいい。」
- 「ホームレスって言っちゃ悪いけど、どちらかっていうといない方がよくない?」
- 「犯罪者殺すのだって同じですよ。群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きてるんですよ。犯罪者が社会にいるのは問題だし、皆に害があるでしょ。だから殺すんですよ。同じです。」
DaiGoのこの発言は優生思想に基づいたものであるといえることができます。
優生思想とは簡単にいうと、優秀な人の遺伝子を保護・継承し、能力の足りない人の遺伝子を排除しようという思想です。
優生思想は一般的に人権侵害や差別を助長する間違った思想であると認識されているため、日本をはじめ世界中の多くの国で話題に出すことや支持することに対してタブー視されています。
優生思想が人権侵害や差別を助長する倫理的に間違った考えであることは歴史が証明しています。たとえば、第二次世界大戦中に行われたヒトラーのT4作戦では多くの身体障害者や同性愛者が強制的に安楽死させられました。大人だけではなく子どもも非行に走る子どもや、ユダヤ人の子どもも強制安楽死の対象となっており2-30万人の人々が犠牲となったそうです。
ヒトラーのこの政策は障害者や同性愛者が、健常者とは違う異常で劣った人々であり「生きるに値しない命」であるという考えに基づいたものでした。彼のこの思想は第一次世界大戦の法外な賠償金に苦しむドイツ社会から生み出され、ヒトラーは国を立ち直すのに必要なのは優秀な遺伝子を持ったアーリヤ人こそで、反対に劣った遺伝子を持ったユダヤ人や障害者は絶滅させるべきであると結論づけました。
(またオーストリア=ハンガリー帝国のマジャール人優遇政策のように国をまとめるのにある一つのグループをえこひいきして、他のグループを冷遇する手段は歴史上よく使われていたのでその目的もあったのでしょう。)

「非アーリア人 」の神経科医は国外に追放され、殺されるか自殺に追い込まれたという。
(SCIENTIFIC AMERICAN “Neurologists’ Role in Nazi “Racial Hygiene” Only Now Comes to Light“ 2017/10 より)
そして優生思想は人権侵害や差別だけではなく、殺人事件や戦争すらも引き起こしました。アメリカ第32代大統領のフランクリン・ルーズベルトが極度の優生思想の持ち主で、その思想が対日戦争の要因の一つとなったのは意外と知られていませんが、ここでは割愛します。
優生思想が殺人事件に発展した代表的なケースに2016年の相模原障害者施設殺傷事件があります。この事件の犯人は殺人の動機としてこう述べました。
- 「重度障害者はこの世に必要ない」
- (「なぜ殺さなければならなかったのか」という質問に対して)「社会の役に立つと思ったから」
(戸田一法「『やまゆり園事件』で植松被告に死刑判決、差別的主張による自説は曲げず」ダイアモンド・オンライン 2020.3)
似たような言葉をどこかで耳にしたことがありますね!文章の主旨をつかんで解釈すれば犯人の発言はまさにDaiGoの発言そのもの、そう思いませんか?
このように特定のグループを劣ったものと認識し、排除しようとする思想は差別や人権侵害、ひいては戦争や殺人の動機の一つとなりえることがわかりました。こういった優生思想こそ健全な社会をいとなんでいく上で「邪魔だし、プラスになんない」ものなのではないでしょうか?
5.猫

「生活保護の人達に食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしいと僕は思うんで。生活保護の人生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで。」
ここからはすごく極端で半分冗談交じりの話なのであまり真に受けないで見てください笑
先述したように、生活保護受給者は少なくとも消費をすることで間接的に経済活動を行っていますが、猫はまったく行えません。(猫がお金を持って何か買ったりとかはしないですよね)ちなみに、猫も臭いです笑
DaiGoの発信する動画は興味深く、エンターテインメントの一環として楽しむ分には十分に面白いものもあるので彼は若年層にある程度の人気を得ています。しかし、多くの人々から人気を得ているインフルエンサーだからこそ物事を深く考え、発信する情報が本当に適切であるかどうかを客観的に見極める力をDaiGoは身に付けるべきなのではないでしょうか。
あなたはDaiGoの”炎上発言”についてどう思いますか??よろしければ、コメント欄に遠慮なく投稿してください!
出典
・ヘブライの館2「ナチスとアメリカの『優生思想』のつながり」(2000.)