こないだ発生した大阪の北新地ビル放火事件を受けて、放火に使われたガソリンの小分け販売の自粛を要請するといった旨の声明を大阪市長の松井一郎が発表しましたが、YouTubeのコメント欄やヤフコメにもこの声明と同様に、ガソリン小分け販売を規制すべきだという声が結構上がっていてとても驚きました。ガソリンの小分け販売が強く規制されてしまうとかえって産業や人々の生活の営みが麻痺してしまいます。
通常、ガソリンは車やバイクが走るために使われますが、そのほかにも芝刈り機や耕運機、ガソリンストーブなどガソリンで動く機械を使用するためにも使わます。街中でよく見かけるガソリンスタンドでは乗り物に給油する以外にも、専用の携行缶にガソリンをスタンドの人に入れてもらって購入することが認められています。
ガソリンは非常に燃えやすく、またガソリンスタンドで誰でも簡単に手に入れることができることから、今回の放火事件や2019年に発生した京アニ放火事件などでも人の命を奪うためにガソリンが使われました。
人によっては生活必需品である一方で、時として凶器となりうるガソリンですが、僕はガソリン小分け販売の更なる規制は反対です。なぜかというと、ガソリン小分け販売の規制自体は放火事件などの犯罪の抑止に繋がるとは必ずしも言えないからです。
① 小分け販売の規制自体に意味がない

ガソリンスタンドで携行缶にガソリンを入れてもらって購入する際、スタンドのスタッフにガソリンの使用目的を必ず聞かれます。ガソリンスタンドは消防法に基づいて、ガソリンの販売日や購入者の氏名・住所、使用目的、販売量等を記録した販売記録を作成しないといけなくなったからです。(令和元年総務省令第67号)
しかし、使用目的についてはいくらでも嘘をつくことができますよね?たとえば、「芝刈り機の燃料として使う」とガソリンを買うときに嘘ついて、本当は殺人に使いますよっていうことだってできちゃうワケですから。実際に隠しカメラを仕込んで消費者がガソリンを使うところを監視することなんてできないので。また一旦スタンドで車に給油して、家でガソリンを抜き取って容器に移し替えることも簡単にできてしまいます。
みなさんはレギュラーと軽油を入れ間違えてしまったことはありますか?「軽自動車だから軽油かと思った」とかいう漫画みたいな話もありますがこれが結構あるらしくて、入れ間違いに気付かないままエンジンをかけてしまうとエンジンが壊れ、最悪廃車になっていまうこともあります。
ガソリンを入れ間違えた時はふつう、ガソリンスタンドで係の人にやってもらうのが一番ですが、いちおうポンプ付きホースを使えばタンクにあるガソリンを抜くことができます。(まあ静電気とかでとても危ないんですけど)
このように、ガソリンを非合法的に入手する抜け道がある時点で小分け販売の規制は十分に機能していないことがわかります。(実際に使用目的の申告については、お客さんの良心に委ねているところが殆どだそうです)
② ガソリンは生活必需品
東京や大阪みたいに都会であれば電車を使えばラクラク移動できますが、田舎や山岳部ではそうもいきません。電車は二時間に一本というところや、そもそも電車が通ってないところも当然あるので移動手段はほぼ車やバイク、自転車に限られます。
また冬になれば車以外でもガソリンや灯油を使う機会が増えます。新潟や青森などの豪雪地帯では大雪の重みで送電線が切れたりショートしたりして停電になることがあるので、石油ストーブはかかせません。もし、ガソリンの小分け販売がこれ以上厳しく規制されれば豪雪地帯に住む住民の生活に多大な影響を与えてしまいます。
③ 規制は根本的な解決法にならない
ガソリンを使った犯罪を完全になくすにはガソリン自体の販売を禁止にするしかないでしょう。しかし、日常生活に浸透しているガソリンの販売を禁止することは現実的ではないし、ガソリンがなくなれば今度は刃物で、刃物が規制されれば今度は自動車で…など別の手段での殺人事件が起きる、このサイクルの繰り返しです。
単に規制ばかりするのではなく、そもそもなぜそういった事件が起きてしまうのか、その背景にある社会構造に焦点を当てて対策を取っていくべきなのではないでしょうか?
みなさんはどう感じましたか?よろしければコメント欄に残していただければ嬉しいです!
参考文献
・朝日新聞DIGITAL「ガソリン販売、規制強化を求める動き 悩む業者『客はどうすんねや』」(2021.12/26)