【台湾問題】「なぜ台湾が国である」と言い切れるのか詳しく解説!

日本からわずか100余キロしか離れていない国で、日本人の人気の海外旅行先としても馴染み深い台湾(正式名称は中華民国)ですが、ニュースをぽちぽちみていると、よく台湾と中国がなにやらいざこざを起こしているところが報道されていますよね。中国は「台湾は中国の一部であり国ではない」と主張しており、既に人民解放軍がそう遠くない未来に台湾を軍事侵攻し、併合する計画を立てているという分析がされています。もし軍事衝突が生じれば世界規模で大きな禍根を残すことになると思います。

そういうわけで安全保障の面から台湾問題は日本にとっても決して無視できない懸念点の一つで、2021年7月には麻生太郎副総理(当時)が台湾で軍事衝突があった場合は集団的自衛権を行使して台湾を防衛する旨を発表しており台湾問題はまさに「世界の火薬庫」となっているわけです。

台湾の「国」かどうかをめぐって東アジアを中心にピリピリと緊張状態が続いていますが、それでも台湾がれっきとした一つの国であるワケをこれから説明していこうかなと思います。

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まず国とは何か

みなさんは中学の社会の授業で「国が成立するための三つの条件」を習ったかと思います。ずばり

  1.  領土
  2.  永続的住民
  3.  主権(政府)

ですね。

政治学ではモンテビデオ条約に基づいて、この三つの条件の他に「国家承認」(他国との関係を結ぶための能力)が国家成立の条件とする場合もありますが、いずれも台湾はこれらの要素を満たしているといえます。

  1.  領土 ― 台湾(島)(公式では中華民国) ⭕
  2.  永続的住民 ― 約2300万人(2020) ⭕
  3.  主権(政府) ― 中華民国政府、独自の通貨や憲法がある ⭕

台湾は国際的な結びつきがあまり強くなく、国際組織ではWTOくらいしか加盟していません。しかし現在国連やTPPやなどといった国際組織に台湾を招待しようという気運が国際社会で高まっており、今後の展望を注視する必要があると思います。また台湾を国家として認めている国は14カ国あるため、(2021.12)台湾は他国との関係を結ぶための能力を他国と比べると弱いとは言え、有しているといえます。

実際、世界にはある国によっては国家承認されていても、別の国では国家承認されていないという国家が結構あります。たとえば、日本は北朝鮮を国家として承認していませんが独立国の一つであり、カンボジアやスウェーデンなど外国と国交を結んでいます。

またよく国連に入っていないと国家として認められないという声も聞きますが違います。たしかに、国連の加盟国は独立国家としての地位が強く保障されるという風潮がありますが、国連加入は国家成立の条件ではありません。スイスは2002年に国連に加盟しましたが、2002年までスイスは国ではなかったわけではないですよね!

歴史的に中国王朝は台湾島を統治していない

中国の憲法にはこう明記されています。

 「台湾は、中華人民共和国の神聖な領土の一部である。祖国統一の大業を成し遂げることは、台湾の同胞を含む全中国人民の神聖な責務である。」

(台湾是中华人民共和国的神圣领土的一部分。完成统一祖国的大业是包括台湾同胞在内的全中国人民的神圣职责。)

中华人民共和国宪法 『序言』

中国は台湾の統治権、つまり台湾が中国の領土であることを正式に主張しています。

しかし、国際法では領土とは国家の主権、支配、あるいは司法権の及ぶ地理的領域のことを指します。先に述べた「国が成立するための三つの条件」を見ても台湾が独立した国家であることは明らかですが、それ以前に中国が台湾を自国の領土であるという主張が矛盾している決定的な理由があります。そもそも歴史上、本当の意味で中国は台湾を統治したことが一度も無いのです。

ここで統治とは何かを考えてみましょう。

「統治」とは「特定の少数者が権力を背景として集団に一定の秩序を付与しようとすること。」(『世界大百科事典 第2版』)という意味です。「一定の秩序を付与する」とはかいつまんで言えば、現地の治安や社会状態を保つことと解釈できますが、中国の歴代王朝は台湾に対してそのようなことをしませんでした。

台湾が清の勢力下に置かれた(福建省台湾府の設置)のは1684年のことですが、台湾の開発は基本的に中国本土からの漢人移民に放任されており直接的な統治は行っていません。当時の台湾には首狩りを行う原住民が存在していましたが、治安維持のために首狩りを禁止したわけではなく漢人が、首狩りを行う原住民居住地に立ち入らないように境界(土牛紅線)で隔てただけで清は台湾の治安向上に殆ど貢献しませんでした。

公衆衛生に関しても清は基本放置スタンスで、20世紀初頭まで台湾はマラリヤやコレラなどの伝染病が蔓延る世界有数の「瘴癘しょうれい(伝染病のこと)の地」でした。こういった伝染病がなくなったのは日本統治時代の後藤新平の衛生政策の成果によるものであり、それまで清の「統治下」ではそうした政策は全く行われてこなかったんですね。

台湾の古地図 赤線(土牛紅線)の奥(山脈)側が原住民居住地(蕃地)を指す。 中央研究院歴史語言研究所『台湾歴史文物陳列館』より引用

さらに清が台湾を統治していないといえる最大の理由は、清が台湾の領有を事実上否定していたことです。

19世紀後半になってくると日本と同様、外国船が台湾にやってくるようになりますが、この時台湾原住民による外国人殺害事件が相次いで起こりました。

☑ Point

ローバー号事件(1867/アメリカ人)や琉球漂流民殺害事件(1873/日本人)等

この時、アメリカや日本は台湾が清の領土であるとみなしていたので、清に台湾人原住民(パイワン族)の行った所業について抗議を行いましたが、清はアメリカに対し

 「アメリカ人が殺されたのは野蛮人の居住する地域(生蕃界)であり、中国の領土や海域を越えた場所(王化不及)である。それゆえ条約(望厦条約第11条と第13条のこと)は全く適用されない。野蛮人の土地は清の支配下になく、清がその責任を負うことはできない。」

YUANCHONG WANG(2014)”RECASTING THE CHINESE EMPIRE:
QING CHINA AND CHOSŎN KOREA, 1610S–1910S

として清は、台湾は清の領土ではないのでその責任を負わないと断言しています。

通常、自国の領土となればそこに住んでいる原住民も完全にその国に同化し、同じ国民として扱われ国家によって保護されます(例えば、日本は台湾・朝鮮を大日本帝国の領土の一部として併合し現地の住民を同化させて同じ「日本人」として扱った)が、清の場合違いました。

中国の歴代王朝は古代より台湾を「化外の地」とみなしており、上に書いてあるように台湾統治を放置していました。「化外の地」とは漢人以外の”野蛮人”が住んでいる未開の地のことを指します。

このような状態で中国の歴代王朝が台湾を統治していたと認めることは非常に難しく、中国の台湾が自国の領土であるという主張は妥当性を欠いているといえます。

台湾=中華民国

台湾島(やその周辺にある澎湖諸島など)が1945年まで日本の領土だったのは有名な話ですが、日本の敗戦後に台湾島の帰属先がどこになったかはご存知でしょうか?

答えは中華民国です。

第二次世界大戦後の国共内戦でそれまで中国本土を統治していた中華民国が共産党軍に惨敗を喫し、台湾島に政権を移動させました。これにより台湾島は中華民国の統治下となります。

先ほど中国王朝は事実上、台湾を支配したことがないと書きましたが、清は日本の台湾出兵以後ようやく本格的な統治に乗り出し1895年の下関条約では台湾は清から日本に割譲されたこととなっていたので、清の当時の継承国である中華民国が台湾を統治する流れになったわけです。(中華人民共和国はこの時まだ成立していなかった)1952年の日華条約(日本/中華民国)にしたがって日本が台湾島を放棄し、中華民国に属することも日華両国が認めています。

さて、この条約ですが1972年の日中国交正常化によって日本側が一方的に条約を破棄したため(台湾との断交)、日本では事実上無効になったという見解が示されていますが、外交関係に関するウィーン条約第63条には、国交断絶が国家間の条約の締結を妨げるものでも既存の条約に基づく法的関係に影響を与えるものではないと定められています。

国と国のあいだで結ばれた条約が当事者の合意なし(一方的に)に無効となる例外は、強行規範(あまりにも国際社会の規範から逸脱した条約を無効にする規範)と国際法に新しく成立された強行規範に反する条約(ウィーン条約第64条)や、脅迫や武力行使を用いて強制的に結ばれた条約など数少ないですが、中華民国側はこの条約を破棄していないため、日華条約は国際法上では現在でも有効となっています。したがって、台湾島の帰属は日華条約に明記された中華民国に現在もあり、中華人民共和国ではないのです。

☑ Point

ウィーン条約第63条は外交関係において、双方が自由意志で結んだ合意は守られるべきである(pacta sunt servanda)という原則を表したものです。

まとめ

こんな感じで台湾は国であると言い切れることを説明してきました。

日本からとても近い国である台湾。

コロナが落ち着いたらぜひ一度訪れてみたいですね!

参考文献

・中华人民共和国宪法 『序言』

・羽根次郎『ローバー号事件の解決過程について』(2008)日本台湾学会報 第 10 号

・楊合義『台湾の変遷史』(2018)展転社

・National Geographic ENCYCLOPEDIC ENTRIES『Territory

・Oliver Dörr, Kirsten Schmalenbach ”Vienna Convention on the Law of Treaties A commentary“(2012)

・United Nations Treaty Section of Office of Legal Affairs ”SUMMARY OF PRACTICE OF THE SECRETARY-GENERAL AS DEPOSITARY OF MULTILATERAL TREATIES(1999)

・YUANCHONG WANG ”RECASTING THE CHINESE EMPIRE:
QING CHINA AND CHOSŎN KOREA, 1610S–1910S”
(2014)

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